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1.拳に走る痛み


中学校という、上下関係が成り立ち始めた、いわば社会の縮図に身を投じた途端、生まれつき目付きが悪く、髪も赤色だった俺はすぐに上級生の、ガラの悪い連中に目を付けられちまった。

「オイオイ、ついこの間まで小学校通ってたくせにいきなり髪を赤く染めてくるとか、テメェ調子乗ってんのか?」

「ンだ、その目は。睨んでんじゃねぇぞゴラ"ァ"」

入学して数日、上級生に呼び出され、俺は屋上に来ていた。

…今思えば、俺の入学した中学はかなり荒れていた方なのかもしれねぇ。

(髪も目ぇも、両方生まれつきなんだがなぁ)

ビビってはいなかった。
所詮こいつ等は虚勢を張っているだけなんだと、幼いながらに理解していたからだ。

だから口を開かず、その場をやり過ごそうとした。

しかしそんな俺の態度が気に食わなかったんだろうよ、一人が殴り掛かって来やがった。

ぐらつく視界、遅れて伝わる頬への痛み。

殴られたと理解した途端、俺の視界は真っ赤に染まった。



…何も覚えちゃいねぇ。
気付いたら、そう…、気付いたら、俺の足元に蹲るガラの悪い連中。

最初は理解できなかったな、なんだこれはって。

しかしまぁ俺以外立っている奴はいねぇし、俺がやったんだろう、そう思った。

しばらくして尻尾を巻くようにして逃げて行く上級生の背中を見送ると、拳に微かな痛みが走った。

見ると赤く、擦れている。

あぁ、俺ぁ人を殴っちまったのか…。

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