Long | ナノ

5.目が覚めると

氷鷹くんにおんぶされていたのも露知らず、ようやく意識が戻り掛けたその時、突然頭上から

「すまなかった」

となぜか謝罪をする声が聞こえた。

重たい瞼を開けようとしていたのを止め、その声に耳を澄ますと、おそらく声の持ち主は氷鷹くんなのだろう。
そしてここは…。
自らに掛けられた布団、おそらくベッドの上…?
いまだがやがやと生徒の声が聞こえる、…という事はここは保健室のベッドの上なのかな。

一人悶々としながら憶測を立てていると、氷鷹くんは

「何も知らないお前に、勝手な期待を押し付けて、騒動に巻きこんでしまったのもそうだが…、俺はひとつお前に嘘をついていた。
否、事実をひとつ、明かさずにいたんだ」

とずいぶんと重たいトーンで氷鷹くんは語り出した。


…その内容は思っていた以上にひどいものだった。

アイドル育成学校、夢ノ咲学院。
しかしその実態は生徒会が独裁国家を行う、無個性のアイドル大量生産するだけの学院に成れ果ててしまったのだという。

氷鷹くんが扉を閉めた音を聞くと、なまえは伏せていたまつげを薄っすらを持ち上げた。

(…やっぱり保健室…だ、それにしてもさっきの話は…)

彼女の人一倍強い正義感故か、はたまた困っている人を見捨てておけない優しさ故か、どちらにしろ彼女の中で答えはすでに決まっていた。

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