Long | ナノ

4.昼休み

ようやく慣れない授業も終わり、グッタリしていた矢先に、あの三人に声を掛けられた。

「というわけで、昼休みだぞっ☆」

相変わらず元気な明星くんを筆頭に、遊木くん、氷鷹くんと続いて喋り出し、何やら成り行きで食堂で昼食をとる事になった。

食堂へ行くまでの間、明星くんと遊木くんからの茶々を流しながら氷鷹くんがザッとこの夢ノ咲学院について説明をしてくれた。

夢ノ咲学院にはアイドル科とプロデュース科の他に、普通科、声楽科、音楽科、演劇科の計6つの学科があるそうだ。
中でもアイドル科には特に手を掛けているとかなんとか…。

そうこうしている内に無事に食堂へと辿り着いた。

しばらく食堂内で昼食をとっていたのだが、何だか外が騒がしいとの事で、野外に設置されているらしいライブステージへと四人で足を進めた。




「わぁ、すごい人だね。何があるんだろう?」

なんとなく思った事をそう口に出してみた。
私の身長で背伸びすると辛うじて見えるステージの上には、マイクを片手に黒髪に赤のメッシュを入れた元気そうな男の子がアナウンスをしていた。

『申し遅れたッス! 自分は【第三十二回-ドリフェスB1龍王戦】の実況や投票の集計を任された空手部一年、南雲鉄虎ッス! 押忍!
趣味は筋トレ! 好物はカルビ!将来の夢は男の中の男ッス!』

次いで司会の男の子に紹介され、出てきたのは銀髪の前髪の隙間から金色の瞳が覗く、大神晃牙という男の子だった。

彼は制服に身を纏っている訳ではなく、まるでアイドルが着るような衣装を身に纏い、エレキギターを掻き鳴らしつつ、何やら叫んでいた。

そしてそのステージの端にいたのが赤髪のいかにもヤンキーとでも言われそうな男の子だった。
しかし彼は口元に付いたナポリタンを拭いたいだ、何だと司会の男の子と揉めていた。

そのやり取りを聞いた後、二人の元へと歩み寄っては

「あ、あの…これ、よかったらどうぞ」

ポケットからハンカチを取り出し赤髪彼へと差し出す。正直怖くて声も手も震えていた事だろう。
しかし赤髪の彼は柔らかな声色でお礼をいい、私のハンカチと共にステージへと上がった。

紹介によると赤髪の彼は鬼龍紅郎と言うらしく、大神くんが演奏している所に横から蹴りを入れたりと、アイドルとは程遠い様な戦いを繰り広げていた。

しばらく攻防が続いていたが、ついには鬼龍先輩の体当たりで大神くんはステージ外へと吹っ飛ばされた。
それとほぼ同時に突然司会をしていた鉄虎くんのマイクの電源が落ち、代わりに可愛らしい女の子の様な声が辺りに響く。

しかしそんな事よりも吹っ飛ばされた大神くんがこちらへ飛んで来ている。
氷鷹くんは放っとけ、と急いで逃げようとするが、明星くんは両手を広げ彼を受け止めようとしていた。
怪我でもしたらどうするのだろうかと心配気にその成り行きを見詰めていたのも束の間、明星くんを踏み台にした大神くんが今度はなまえの方へと飛んで来た。
避け切れるはずもなく、背中に大きな衝撃が走り、傍から見ると押し倒されるような体勢になっていた。

目の前でどこか得意気に話す大神くんの声が段々と遠くなっていく…、


あぁ、転校初日から、ツイてない…


なまえの意識はそこで途絶えた。

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