Long | ナノ

2.やっほう☆

担任の隣に立ち、教室を見渡すと数人ではあるものの見事に男子しか居なかった。

「テスト生としてプロデュース科に編入して来ました、みょうじなまえです。これからよろしくお願いします。」

何とも味気の無い自己紹介を終えると、教室からはチラホラと拍手が聞こえた。

担任に促されるまま指定された席に着くと、すぐに朝のHRは終わりを迎えた。



「やっほう☆きみが噂の転校生だな!」

はち切れんばかりの笑顔を浮かべたオレンジ色の髪に青い瞳の彼はこちらに向け、両手を広げながらそう言った。

「俺、明星スバル!明けの明星の『明星』で『あけほし』、スバルは片仮名! 覚えやすいだろ〜♪」

にこにこと笑顔を浮かべ明るい声色で自己紹介を始める。

「クラスメイトになるんだし、せっかくだから仲良くしよう! 友達になろう! よろしく〜っ☆
というわけで! 突然だけど、お金を貸してください…!」

…えぇ?!

「突然すぎるわ」

明星くんの隣に居た黒髪の真面目そうな男の子がすかさず口を挟んだ。

「初対面でいきなり金をせびるな。礼儀知らずだろう、転校生も戸惑ってるぞ?
すまん、転校生。こいつの発言は無視してくれ、明星はアホなんだ」

冷静に口を挟んだ彼は明星くんを横目で見つつそう言った。

「だがまぁ…。この学院にはアホがおおいが決して『アホしかいない』というわけではないことを理解して欲しい」

「ひどいこと言うなよホッケ〜!俺の転校生への第一印象が『アホ』で確定されちゃうだろ!」

「ホッケ〜って呼ぶな」

「え〜?『ひだかほくと』なんだからホッケ〜でOKでしょ☆
ついでに紹介するぞっ、こいつは氷鷹北斗! ホッケ〜でいいよ! 俺の友達なんだ!
お金を貸してくれないタイプの友達…!」

「余計な情報を付加するな。
すまん、転校生。どうか誤解しないでほしい。明星はアホなうえに異常に金に執着するが、いいやつだ。
あと空気を読めない、他人にみょうな渾名もつける」

わぁ…、氷鷹くんってけっこう言う人なんだ…。

「フォローするふりしてフルボッコにしてるだろホッケ〜!? もっと俺を誉めてよ! あるいはお金を貸してください…!」

「金は貸さん。おまえ、別に貧乏なわけじゃないのになんでそんなに金をほしがるんだ?」

「お金とか宝石とかはキラキラしてるから好き〜っ☆」

「鳥か、おまえは。あぁ、鳥頭なんだな…。」

目の前で繰り広げられるコントのようなやり取りを、なまえはただキョトンとしながら眺めていた。

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