Long | ナノ

20.チョ〜うざぁい♪

皆差し入れを喜んでくれて、無事にレッスンも終わり、1人で防音レッスン室に残ってTricksterの専属衣装を作っていたら真緒くんが鼻歌を歌いながらレッスン室に入って来た。

「…おろっ、転校生。まだ帰ってなかったのかよ、もう夜中だぞ」

「え、うそ。ちょっと熱中し過ぎちゃったみたい」

そう言ったなまえの手には縫い掛けの衣装が握られていた。

「お、俺達の専属衣装か。巻き込んじまった上にそんな事までさせちまって申し訳ねぇな。ありがとう、なまえ」

真っ直ぐに私の瞳を見つめ、そう感謝を述べる真緒くんに思わず睫毛を伏せては小さく頷いた。

「ははっ、…にしても真のやつ遅いな。『ちょっとランニングしてくる』っつって出ていったっきり、戻ってこないんだけど。あいつ、どこかでぶっ倒れてんじゃないだろうな?」

確かに時計を確認すると、真くんがこのレッスン室を後にしてからゆうに一時間は過ぎていた。

「心配だな、俺ちょっとそのへん見てくるよ」

そう言って真緒くんがドアの方を向いた途端、そのドアが開いた。

「〜♪
あれっ、まだいたの、ふたりとも?もう日付が変わりそうな時刻だよ〜?」

大きな荷物を抱えた真くんだった。

「おぉ、真……。こっちの台詞だよ、お前も、まだ帰んないの?
ていうか、どこをほっつき歩いてたんだよ。あんまり心配させんなよ。いま、探しに行くところだったんだぞ?」

「いやぁ、ランニングしてたら『ちょっと面倒なひと』に絡まれちゃってさ。
どうにか振り切って逃げてきたんだよ、あぁ生きた心地がしなかった!
もともと、今日は泊まりこむつもりだったんだ」

なるほど…、大きな荷物はどうもその為だったらしい。

『S1』まではこのレッスン室に泊まりこむつもりだという真くんに真緒くんも付き合うと強引に決定させた。

「じゃあ、私も泊まりこみで衣装完成させようかな」

そういったなまえを驚いた様に瞳を瞬かせながら、真緒くんと真くんが見つめる。

「駄目だよ、いちおう異性だよ? 同じ部屋で寝泊まりするなんて、なにかあったらどうするの?」

「そうだぞ、それになまえと一夜を共にしたなんてスバルや北斗に知られたら何を言われるか分かんねぇしな」

二人に言い負かされて渋々帰ろうかと準備をしていると真緒くんが「寝泊まりの道具取りに行くついでに送ってやる」と腰を上げた。

すると突然私達以外の声が聞こえた。

「ゆうくん。
逃げるなんて酷いじゃん、傷ついちゃうなぁ?」

銀髪の綺麗な男の人が扉に背を預けながらこちらを見ていた。

「げぇ!? い……泉さん!」

「『げぇ』って何なの、お化けでも見たような反応だねぇ。チョ〜うざぁい♪」

…誰、だろう。この人。

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