Long | ナノ

18.一粒300kmでござる!

ガーデンテラスで差し入れを作っていた時に物陰から一人の男の子がこちらを覗いていた。

「お、仙石〜、何してんだ?こっち来いよ」

真緒くんが手を上げて男の子を招く。

おずおずと出て来た少し小柄でつり目の彼は、藍色の髪に黄色いメッシュが入っていた。

「せ、拙者、仙石忍という者でござる! 忍者同好会で衣更殿には色々と御世話になってるでござる!」

ござる?
なんだか忍者みたいだなぁ。

「忍くんかぁ、なんだか名前も忍者らしいね」

「…ほ、本当でござるか? 拙者、そんな事を言われたのは初めてでござる!」

途端に目をキラキラと輝かせ食い気味に話し出す忍くん。
…なんか、可愛い‥。

Tricksterの為の差し入れを作っているのだと説明すると

「日頃の衣更殿への感謝と転校生殿とのお近付きの印に、忍者の非常職 兵糧丸 の作り方を教えるでござる〜!」

そう言ってよく分からないカタマリの作り方を教えてくれた。

真緒くんがひとつ手に取り、口に運ぶ。

「…意外とイケるな」

「一粒300kmでござる!」

まぁ…真緒くんがそういうならいっか。

忍くんは大量に作り過ぎた差し入れとドリンクを運ぶのを手伝ってくれた。

勿論真緒くんが私の頭を撫でている所を忍くんにも見られた訳だけど…。

なぜか忍くんまで真っ赤になって、金魚見たいにぱくぱくと口を動かした後

「衣更殿! かっけーでござる!!」

と再び目をキラキラと輝かせていた。

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