▼ 17.差し伸べられた手
「転校生〜? ガーデンテラスにいる、って話だけど…戻ってくんのが遅いから、様子を見にきたぞ〜?
なにか手間取ってんなら、力を貸すよ」
…この声は、真緒くん?
ぎゅっと閉じていた瞳を薄っすらと開ける。
「おいおい、そんなに見つめないでくれる? 男に見られて喜ぶ趣味はないんだけど?
ていうか、今ちょっと取りこみちゅうだから! 出てってくれるかな。 しっし!」
真緒くんと羽風先輩の話し声が聞こえてくる。
そこに朔間先輩がやって来たようで、なんとか羽風先輩は帰って行ったようだ。
するとなまえが身を潜めていた戸棚の戸が開く。
突然差し込んだ光に目を細め、なんとか慣れてくると真緒くんがこちらへと手を差し伸べてくれていた。
怖さゆえ思わず抱き着きそうになるも、その手を取り、戸棚から這い出ては当初の目的のドリンク等を作り、防音レッスン室へと向かった。
「なまえ、お前この学院に女の子一人なんだしもっと警戒しろよな〜?
つってもあの人程警戒する必要はないと思うけど」
「うぅ…、これから気を付ける」
「うし、それでいい。まぁいざとなったら俺を呼んでくれ。力になるからよっ!」
そう言ってなまえの頭に手を置いた真緒くん。
彼は無意識なんだろうけど、自然となまえの頬には熱が集まっていった。
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