Long | ナノ

16.薫風

ユニットレッスンは防音室でやると聞いていたなまえは、まだまだ素人の自分に出来る事を探し、スバルくんと行動を共にしていた際に学んだ栄養学を駆使して、Tricksterの彼らの為に栄養ドリンクを作ろうとガーデンテラスに向かっていた。

すると突然背後から

「あっ! ねぇ、そこの君」

声を掛けられる振り返るとクリーム色の髪色の格好良い、けれどどこか軽そうな男の人がいた。

「えっと…私、ですか?」

「そう、そう。君だよ。
新しく2年に来たっていう転校生ちゃんだよね?
名前はみょうじなまえちゃんでしょ?可愛いね〜、ねぇ、これからデート行かない?」

何なんだろう、この人は。
いわゆるナンパというものなのかな。
ネクタイの色からして3年生なのだろう。

あまりそういった経験のないなまえが反応に困っていると、彼はなまえの肩を抱き、ガーデンテラスとは逆の方向に歩き出した。

「あっ、あの、困ります。今から用事があって…」

「え〜?そんなのいいじゃん、俺とデートする方が絶対楽しいと思うんだけどな〜?
あ、俺 羽風薫、よろしくね〜♪」

そういってウインクをする。

確かに見てくれは…格好良い、けど。

堪らず羽風先輩の腕を振り払い、ガーデンテラスへと駈け出した。
すると、走りはしないものの追いかけてくる羽風先輩。

厨房に逃げ込み、戸棚の中へと身を隠すとすぐに羽風先輩が入って来た。

「おーい、転校生ちゃーん?
ひどいなぁ、いきなり逃げちゃって。あ、もしかして照れてる?
何もしないから出ておいで〜」

(…何、あの人。怖い…)

だんだんと足音が近付いてくる。

あぁ、このままだとバレてしまう。
どこかに連れ去られちゃうのかな…。

歪む視界をぎゅっと閉じた。

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