▼ 15.呼び名
なまえの帰りを待つ3人はグラウンドにいた。
「おぉい、転校生〜! こっちこっち〜♪」
金属バットを片手にした明星くんが手を振る。
もしもの時に備えて武装していたらしい。
「ところでなまえ、どんな話をしたんだ?」
顔を覗き込む氷鷹くんに武道場でのことを話すと
「そうか」
となまえ同様に嬉しそうな表情を浮かべてくれた。
今日から『ユニット』レッスンができるらしく、ウキウキの明星くんが氷鷹くんにもう一人のメンバーのことを尋ねていた。
(あ、そうだ、もう一人…えっと、サリ〜って呼ばれてたっけ?)
するとそこに前髪をピンで留め、額を出した赤髪の男の子が現れる。
いわく、もう一人のメンバーらしく、氷鷹くんが予め携帯電話で呼び出していたらしい。
「おっと、初めまして転校生。俺、衣更真緒。
スバルと同じバスケ部員で生徒会の会計、んで『Trickster』の一員だ。あらためて、よろしくな」
衣更…いさら、サリー…?
明星くんの渾名のセンスに脱帽しちゃうな…。
「気安く『サリ〜』って呼ぶといいよ☆」
「よくないよ、お前変な渾名付けるくせ止めろよな」
どうも、渾名を付けられた本人はあまりお気に召していない様子だ。
そういえば氷鷹くんもそうだったな…。
遊木くんは受け入れていたようだけど。
「初めまして、みょうじなまえです。プロデュース科に編入生として来ました。
えっと、なら…『衣更くん』、でいいかな?」
「ははっ、堅苦しいなぁ。
どうせこれから運命共同体になるんだろ?気軽に『真緒』でいいよ」
そういって衣更くんはどこか困ったように苦笑いを浮かべる。
「あっ! ズルいぞ、サリ〜!
ねぇ、ねぇ、なまえ。俺のことも『スバル』って呼んでもいいんだぞ☆」
「なんで明星くんはそんなに上からなの…。
でも確かになまえちゃん、僕らのことを苗字で呼ぶよね」
そう、だったかな。
あまり意識していなかったなぁ。
いきなり名前呼びなんて気が引けるっていうのもあるし…。
そう思って呼んでいたのだが、彼らはあまり気に入っていなかったようだ。
「なら、これからはみんなのこと名前で呼んでもいい…かな?」
ニコニコと笑顔を絶やすことなく頷くスバルくんに首が外れるんじゃないかと心配になる程頷く真くん。
真緒くんは「当たり前だろ〜?」と、今度は柔らかく微笑んでくれた。
北斗くんは言葉を発しなかったが、小さく口角を持ち上げ頷いてくれたのでおそらく承認されたのだろう。
新しい呼び名に多少の違和感を覚えるも、ほんの少しだけ彼らとの距離が縮まったような気がした。
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