Long | ナノ

12.現実

氷鷹くんと遊木くんが特訓に励んでいる中、なまえと明星くんは講堂にて、ドリフェスを観戦していた。

紅月 VS Ra*bits

紅月というユニットの中には生徒会副会長の他に、龍王戦で大神くんに体当たりをかましていた鬼龍先輩や同じクラスの神崎くんの姿もあった。

一方Ra*bitsには明星くんを通じて、ドリフェスの前に少しだけ、控室という名の教室にお邪魔させてもらっていた。

先攻は紅月。
伝統芸能を重んじている和風ユニットだけあって、テーマがしっかりとしている。
舞台の真ん中で一際目を惹く動きをしている鬼龍先輩。
その動きに負けず劣らず、神崎くんのダンスにも惹かれるものがあった。
そして艷やかな声でメロディを奏でる生徒会副会長。
確かに、見ている人全てを惹きつけるような素晴らしいライブだった。

後攻のRa*bitsのライブが始まるよりも先に、なまえと明星くん以外の観客はさっさと投票を終え、講堂を後にしてしまう。

観客が二人っきりとなった講堂のステージの上でRa*bitsの皆は元気に歌って踊っている。

紫之くんの綺麗な歌声。
天満くんのパワフルな動き。
真白くんの真剣な顔付き。
そして仁兎先輩の輝くような笑顔。

Ra*bitsのライブだって、素晴らしいものだった。
私たち二人にしかそれを知ることはできなかったけれど、紅月にだって負けてない。
確かに、完成された紅月のライブと比べ、どこかたどたどしく、不安な所もあった。

けれどその初々しさが観客を楽しませてくれるんじゃないのか、と。




「明星くん、ライブ終わったよ? そろそろ行こう?」

そう声を掛けてみるも彼は微動だにしない。

それどころか彼の大きな瞳は薄く膜を貼り、目の縁には涙を溜めていた。

どうしてやればいいのか分からないなまえはとりあえず氷鷹くんと遊木くんを呼んで来ようと、講堂を後にし、軽音部の部室へと走って行った。

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