Long | ナノ
▼ 11.過去編U
千秋side
窓から刺す夕陽に照らされた彼女の濡れた横顔は、今まで見て来たどんな女優より、アイドルよりも美しかった。
大きな瞳に溜まった雫が彼女の頬を伝う度、それは陽の光に反射し、キラキラと、まるで宝石の様に輝いていた。
思えばあの時、彼女に惚れたんだろう。
決局俺は彼女に声を掛けることは出来ず、次の試合へと向かった。
結果は惨敗。
応援席には彼女の姿もあった。
悔し泣きをする部員の肩を抱き、いつものように高笑いをするも、瞳からは涙が溢れて来た。
そうして俺の中学最後の大会は幕を閉じ、高校受験のため、勉学に勤しんだ。
その間もあの時の彼女の横顔が頭から離れず、学校で見掛ける度に、俺はなまえへの想いを再確認させられたのだ。
高校受験も終わり、俺は見事夢ノ咲学院のアイドル科に入学することが決まった。
正直もう二度と会う事はないだろうと思っていた。
ここは夢ノ咲学院アイドル科。
男性アイドル育成学科だ。
女性である彼女が入れる訳がない。
そう思って自らの恋心に蓋をして卒業を迎えた。
…迎えたはずだった。
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