Long | ナノ

9.もしかして…

千秋side



転校生が来てからというもの学院中はもっぱらその転校生の噂で持ちきりだった。

無理もないだろう、男子ばかりのむさ苦しいこの学院に女子が来たというのだから。

しかし俺は転校生の性別、学年しか知らず、名前や彼女の学歴などは全く知らなかった。



いつもの朝、俺はバスケ部の朝練を終え、誰よりも早く教室に入り、授業の準備をしていた。

するとそこに俺のクラスメイトの羽風薫が入って来た。

「おっはよー。ねぇねぇ、泉くん。転校生ちゃんの話知ってる?」

同じくクラスメイトの瀬名泉に話し掛けに行く。

「はぁー?朝から絡まないでくれるかなぁ、ちょ〜うざぁい。
転校生云々の話なんて学院中の噂なんだから知らないわけないでしょ。
それで、その転校生がどうかしたわけー?」

ウザイなどと言いながらもちゃんと話し掛けて来た理由を聞いてあげる辺り、瀬名はなんだかんだ言って優しいのだ。

そう思いながら瀬名と羽風の会話に耳を傾ける。

「そうそう、その噂の転校生なんだけどさ。この前、朔間さんが軽音部に呼んでたらしくてさぁー。同じユニットなのに俺に教えてくれなかったんだよ?ひどいと思わない?
転校生ちゃんが来るって知ってたら、女の子とのデートキャンセルしてでも会いに行ってたのになぁ」

「で、だからなんなの。ただの愚痴を聞かせるために朝から話しかけてきたわけ?」

「えっ?そうだけど? まぁそれもあるけど転校生ちゃん、なまえちゃんっていうんだって。名前もかわいいからよけいに会いたくなっちゃったなぁ」

…なまえだと?
もしかして…
そう思った途端俺はガタンと立ち上がり二人のそばへと寄って行った。

「おはよう、瀬名! 羽風!
突然なんだがその転校生の名前を教えてもらえるか?」

「えっ?あぁ、おはよう千秋くん。
転校生ちゃんの名前? 確かみょうじなまえちゃんだった気がするけど…」

みょうじなまえ…
俺か羽風の勘違いじゃなければ、おそらく彼女は…

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