「お願いします。私を買ってください」

騒がしい色街の中で今にも消えそうな声とともに袖を何者かにくいっと引かれややいらつきながらもそこへ目をやるとまだ10代前半であろう女が俯きながら震えていた。女、というよりは少女と言った方が正しい。
少女の身なりは汚く、ぼろぼろの衣服にそこから伸びた細っこくて白すぎてもはや不健康とも言える手足はミスマッチすぎる。ここ色街でのコイツの存在自体も異色だ。

「お前、言ってること分かってんのか?」
「分かってます。」
「なんでお前みてぇなガキがこんなとこにいるんだ」
「ここでこういうことをしないと、私、生き延びれないんです」
「…」
「だから、」
「俺はガキには興味ねぇ。他あたれ」

色街に来てるとはいえ今回は任務できた。任務以外だったらこんな場所好き好んで来るかっての。
ずるずると滑り落ちる少女の手に力はなく、コイツが死ぬのも時間の問題だなと思った。コイツにもともと情なんて持ち合わせていないため(コイツだけに情がないわけではなく他の奴らもまたしかりである)再び歩みを進めれば、二三歩離れた所で、後方からどさりと何かが落ちる音がした。
なんとなく振り返ってみればさっきのガキだ。なんだ、倒れたのか。

半ば呆れながらもなぜか足はガキに向かう。これには自分でも驚いた。こんなガキ、なんの魅力もなけりゃつい今さっき俺を誘惑してきただけの存在なのに。一体どうしちまったんだ。
俺の内心とは裏腹に、体は勝手に動きとうとうガキに手を伸ばした。

「…おい、ガキ」

ゆさゆさ。ゆさゆさ。
俺にしては優しく揺さぶるがコイツは目をあけない。おでこに手を宛ててみて気づく。あ、そういえば俺、温度なんて感じられないんだった。まあでもコイツはなんらか(多分疲労)による風邪だろ。
すっと手を引っ込めたとき、ガキの目が開く。

「…」
「…あれ、どうして、」
「…」
「…え、ひゃっ」

無言のままガキを抱え上げればこども独特の甲高い声をあげる。

「お前、どうせ帰る所ねぇんだろ」
「…はい」
「なら、今日からテメェの親は俺だ。分かったな」
「…はい!」

細胞売りのこども

細胞売りのこどもに、デッドエンドなんざさせてたまるかっての。

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