夏だ!祭だ!肝試しだ!
突然アジトへリーダーが帰ってきたかと思えば、両腕をめいいっぱい広げて(しかも45゚くらい上に向いてる)、冒頭の言葉を発した。

「は」
「…」
「狂ったか」
「いいっスね!やりましょう!肝試し!」
「ゲハハハ!楽しそうじゃねぇか!…肝試しってなんだ?!」

メンバー達が次々にリーダーに言葉の槍を降らせる中、唯一賛同の声をあげるトビとただの馬鹿である飛段のみがリーダーを言葉の槍地獄から救い出したのである。



「な、なんでオイラからなんだよぉ…」
「デイダラ先輩ビビってんスか?」
「び、ビビってねぇよ!」
「なんだよビビってんのか?さすが童貞」
「それは関係ないだろ!うん!」
「しょうがないよ。くじ引きだもん」
「僕、名前先輩とがよかったです」
「オイラじゃ不満だってーのか?!うん!」
「さっさといきなさいよチ×カス野郎」
「小南?!」

小南が発した言葉はさて起き、リーダーの命令は絶対!なんて言われてしまいなんだかんだで肝試しにやってきました。協力してくれたのは某寺。ありがたや。ルールは簡単。お堂の裏にある御地蔵様の前に団子を備えて来るというもの。順番はくじ。そしてくじの結果、順番はデイダラ・トビ→小南・リーダー→サソリ・角都→鬼鮫・イタチ→飛段・私
実は一番目にデイダラがくるのはデイダラ以外のメンバー全員に仕組まれたことなのである。ドンマイ。

「オラ、さっさと行きやがれ童貞野郎」
「しつこいぞ旦那!」

びくびくと提灯を持ちながらそんな風に叫ばれても…。恐さで震えてるのが丸見えだ。背中が見えなくなったところで私はあらかじめ用意しておいた白いシーツと釣竿(先っぽにはベタだがこんにゃく付き)を持ち、グルのゼツを呼ぶ。黒ゼツの力を借りてデイダラの先回り。

一方デイダラとトビは。

「うぅ、怖くなんてねーぞ。うん。いざという時は爆破して、幽霊をアートにしてやるのみだぜうん」
「せせせ先輩強がってんの見え見えっスよーはははっ、先輩カッコ悪ー」
「そう言うお前も強がってんだろ?足震えてるぜ、うん」
「なな、何を言ってるんすかー」

お互い醜い言い合いをしながらお堂に足を踏み入れた。その時、

ひやっ、

「っ、ぎゃああああああ!でたあああああ!」
「うわあああああ僕死にたくないいいい!!」

まんまとこんにゃくにひっかかり取り乱すデイダラとトビに追い撃ちをかけるかのごとく登場した白いシーツを頭からすっぽり被った名前とゼツ。爆破してやるなんて言ってはいたがこうなると冷静に物事が判別できないらしく。バッターンと豪快な音を立ててひっくり返りそのまま失神。

「…デイダラ雑魚っ」
「トビモカスダッタナ。どうしよっか、運んであげる?」
「そうするしかないよね。…ん?なんかデイダラの股間のあたり、濡れてない?」
「…わっ本当だ、ちびったのかな」
「ありえない…」



「そろそろ行くか?小南」
「さっさと行ってきましょ。…全く、ペインとペアとか。塵に等しい(ぼそっ)」
「ん?何か言ったか?」
「いえ何も」

実は聞こえていてかなり精神的ダメージを受けたペインであった。だがそれを表にださないというなんとも役者。それが忍というものか。

「ぎゃああ!小南!何か、何かいる!」
「くっつかないでちょうだい。暑苦しい」
「ほ、ほら!あそこに…!!」
「…。ただの木よ。ほら、さっさと団子置いて。」

カッコイイ一面を見せるチャンスを自らの手で作り、自らの手でぶち壊しにする馬鹿などいないと思うだろうか。否、ここにいるペインという男がその馬鹿なのである。
そしてまた場面は変わり、スタート地点。

「あ、トビとデイダラ、帰ってきたみたいですよ」
「そうみたいだな」
「随分と遅かったね(確信犯)」
「で、出たんだよ。うん」
「何が」
「幽霊だよ!な、トビ!」
「さぁ、知りませんけど」
「トビテメェェェ!!」
「どうでもいいが次は俺達だ。行ってくる」
「いってらっしゃーい」

ひらひらと手を振りながら、またデイダラ達の時のように先回りする。サソリと角都のコンビは肝試しとか強そう。まず非科学的なものを信じないだろう。

「…」
「…」
「…」
「…これで終わりか。」
「そのようだな」
「チッ、つまんねぇ」
「全くだ。こうしている間にも暁は赤字になっているんだ」

こんなふうにムードのかけらもない二人に忍びよりこんにゃくを投げる。やった、サソリさんのほっぺに命中!だがしかし、それに振り向いたサソリさんの顔と、同時に飛んできた傀儡の顔が恐すぎてちびりそうになった。サソリさんと角都さんには喧嘩売ったらダメだね。

「…お帰りなさいサソリさんに角都さん」
「ああ」
「…」
「何かありましたか?」
「得になにも」
「なにもなかったな。あ、そういえば」

急にじぃっとサソリさんに見つめられ、え、と声が漏れる。

「どういうわけかどっかの誰かさんに似たやつがこんにゃくを投げて来たかな」
「へ、へぇ」

にやり、黒い笑みで私を見つめるその双眼は、後で覚悟しとけよ、と死刑宣告をしていた。くわばらくわばら。

「さて、次は私とイタチさんの番ですね、って、イタチさん?」
「あ、ふはん、はんほほふっへひはっ「食べながらしゃべらないでください。」…ごくん、すまん、団子を食ってしまった」
「えぇ?…こまりましたねぇ、どうしましょうか」
「どうせ二人はそういうのに強そうだから行かなくていいんじゃね?」
「たしかに」

ということで、満場一致(飛段は寝ているため除く)でイタチ・鬼鮫ペアは肝試し免除となった。
となると次は最後、私と飛段の番だ。私はやりたいことがあるため、飛段を起こしトイレに行くから先に行っててと伝え、再びゼツの元へ。

「じゃ、予定通り」
「うん。マカセトケ…」



「いやぁスッキリした」
「んだよ名前。うんこか?」
「だとしたらそのうんこをあんたの口に突っ込んでやりたいよサソリ」
「そういうプレイは好みじゃねーんだよ」
「どうでもいいけどさ、飛段を脅しに行かない?最後なんだし、出血大サービスでさ!」
「お、いーじゃねーか!うん」
「僕、名前さんがやるならやりますよ!」
「しょうがないですねぇ」
「よし、決まり!」



「名前のヤツ、おせーなー」
「これ、そこの若者」
「あ?んだよ名前か。遅かったじゃねえか」
「言葉遣いがなってないな…」
「ハァ?どうしたんだよ名前」
「分からんのか。私はお前が崇めるジャシン様だぞ」
「えっ?!じ、ジャシン様?!」

目を真ん丸くする飛段に込み上げる笑いをこらえる。ゼツと打ち合わせていたのはこれだ。飛段の馬鹿度をチェックしたいというのが事の発端で、顔とかは丸見えにして、ただジャシンだと名乗れば信じるのかどうかという実験だ。そこまで馬鹿じゃないとは思ってたけど、

「名前、お前、ジャシン様だったのか!!うわ、すげーぞ!ゲハハ!ジャシン様ぁ!」

馬鹿だった。こいつただの馬鹿だ。もはや笑いを通りこした。大丈夫かコイツ。このままだと本気で信じそうで心配だしネタばらしするか。

「ジャシン様〜」
「飛段」
「なんですかぁ?」
「ごめん、私、ジャシン様じゃないんだよ」
「嘘だぁジャシン様は嘘つかねーもん」

だから嘘なんだってば…!
もうどうしよう、そう思った時だった。草むらが音をたて、次の瞬間には、スタート地点にいるはずのみんながわあって大声をあげながら飛び出てきた。びっくりして声もでない私。そして何を思ったか固まるみんな。

「…あれ?名前、どうして」
「今までオイラたちといたよな?うん」
「…え?」
「いつの間に僕たちをぬかしちゃったんっスか?」
「え、ちょっと待って、話が掴めない。私、さっきからここにいるよ?」
「え?でもさっき、トイレから帰ってきて」
「飛段を驚かそうって」
「言ってたはず」
「よね?」

みんなが口々につなぐ言葉の意味が理解できない。何を言ってるかは分かるけど、意味がわからない。

「私、イタズラはしたけど、ゼツと二人だけでこっそりやってたんだよ?」
「え?」
「は?」
「え?」
「え、何?」

お互いハテナマークが飛び交う中、震える声で喋り出したデイダラ。

「え、じ、じゃあ、さっきの名前は…?」

それに続くトビ。

「名前先輩じゃ、なく、て」

あるひとつの結論にたどり着いた時、デイダラとトビは一度見つめ合ってから

「ぎゃあああああああ!カーーーツッ!!」
「でっ、でぇぇたあああああ!!」

発狂して、泡を吹いた。



オチが行方不明

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