「うわぁぁん」
「ほらほらサソリちゃん、もうなかないの」
「血がでてるもん、ひっく」
「だいじょうぶだよ」
「いたいもん」
「じゃあ名前がおまじないをかけてあげる」
「おまじない?」
「うん。ほーら、いたいのいたいのとんでいけー」
「…あれ?」
「ね?もういたくないでしょ?」
「うん!ありがとう名前ちゃん」
「なきやんだごほうびに、今日はおんぶしてあげる」
「ほんと?!やったー!」


小さかった頃、サソリと私は仲良しで、今と変わらずいつも一緒にいた。

「暁の一員のくせに、無様だな」
「…返す言葉もございません」
「…たく、あんな攻撃くらいしっかりかわせ」
「はーい」

ぶつぶつ小言を言いながらも、ちょっとしたミスで馬鹿みたいにケガを負った私をしっかりと背負うサソリに少しの寂しさを覚えた。昔のサソリは私よりも背が小さくて力も弱くて、泣き虫で。同い年なのに何もかも私の方が上だから私の方がお姉ちゃんみたいだったのに。
いつの間にか抜かされてしまった背丈。力だって、精神面だって忍術だって何もかもが気付かないうちに抜かされていた。いつの間に。本当、いつの間にか…。

「…ねぇ、サソリ」
「ん」
「私はもう、サソリには必要ないかもね」
「…は?」
「いだっ」

私の言葉に混乱したのか(だとしたら嬉しい気もする)いきなり私の膝裏を抱えていた腕が消えて、支えをなくした私はお尻から地面にたたき付けられた。

「いきなり何すんの!」

ぎゃあぎゃあ言ってもサソリはひたすら遠い目をしていた。え、何。そんなに混乱することか?

「…名前」
「は、はい?」
「今お前、何て言った?」
「え、いきなり何すんのって」
「そっちじゃない。その前」
「前?…あぁ、いだって言ったかも」
「あーもういい!」

は?え、なんなの急に。

「一応言っといてやるが、お前が俺に必要ないなんて一度も思ったことねぇよ」
「…でもさ、昔は私がサソリの世話をしたりしてたからこそ必要な存在だった訳でしょ?」
「…」
「無言は肯定としてとるよ」
「…」
「そこ否定して欲しかったな」
「…」
「まぁいいや。だけど今はサソリは全てにおいて私より上」

だめ。これ以上言ったら、

「まあな」
「おい。…だからもう、」

だめだってば!言わないで。お願い。もう何も言わないで。これ以上言ったら、もしかしたら、今まで通り、サソリと一緒に

「お払い箱かなって。もう私はサソリを守ってあげる立場じゃない」

いられなくなっちゃうかもしれない。

ぽろり。
虚しくなって涙が出た。馬鹿だな自分は。こんなこと言っちゃったら、もうおしまいだね。
本当はわかってたんだ。薄々気がついてた。サソリがもう、私の知っている弱虫じゃないってことも。日々成長して、私なんてとっくに追い抜かしていたことも、変わってないのは私だけなんだってことも、全部全部知ってた。

だけど受け入れたくなくて気づいてないフリをしてた。だって、そうしてないとサソリと一緒にいられなくなる気がしてたから。大好きな、好きで好きで仕方ないサソリと離れるのが嫌だったから。

「…名前」
「ん」
「確かに昔は俺が守られてる立場だったかもしんねぇ」

かもじゃなくてそうだったんだよ。

「でも、ずっとその関係でいなきゃいけねぇのか?」

そうじゃないと一緒にいられないじゃん。

「これからは、俺が名前を守る立場で、名前が守られる立場じゃいけねぇのか?」
「…え」
「女ってのは、黙って男に守られてりゃいいんだよ」

にやり。
笑ったかと思えば、次には優しい感触が唇に降ってきた。

いただきます。
お前の心も身体も全ては俺のもの。



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