「…どういうことだ」
バンッと豪快な音をたて、机を叩きオレンジ色の髪の男を見た。
俺の剣幕に男は筆を止め、ゆっくりと顔をあげる。
「…サソリか。何だ」
どこを見ているのかよく分からない輪廻眼を見ていると何とも言い表しがたい感覚に陥る。
「シラを切っても無駄だ。なぜアイツが、名前が血継淘汰だと言わなかった」
「…あぁ、そのことか」
リーダーは眉間を指で刺激しながら「何も言う必要はないだろう」と再び視線を書類へと移す。
必要がないだと?ふざけるな。大有りだ。
あんな小娘に、俺が劣っているだと?
悔しくてぐっと手を握れば、相当な力だったのか、腕がミシミシと音を立てた。
「そういえば、」
リーダーの声にハッとする。
視線をリーダーに戻せば相変わらず書類に目を通していやがる。
「名前が言ってたな。『サソリは線がいい』」
「…」
目を見開く。
「『これなら私がいなくても大丈夫だろう』とな」
「何を、」
意味が分からない。
「言っておくが名前は、人工的に作られた血継淘汰だ」
言葉が出なかった。
「つまり不完全体。もちろん副作用もある」
「なら、名前は」
「ああ」
漸く視線をあげたリーダーと、俺の視線がぶつかる。
君が幻の存在になってしまうだなんて僕は信じないよ「あいつの命はもともと長くない」
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