「ここから先は私一人で行く」
「任務なんだろ」
「そうだよ。だけどサソリは連れていかない」
「上からの命令か」
「違う。私の独断だ」
ハッキリと言い放つ名前の目は、これから起こるであろう事を、未来を見据えていた。きっと分かっていた。これから自分に何が起こるのか。
逃げようと思えば出来たはずなのに、名前は現実を受け止めていた。
「死にに行くようなもんだろ」
「そんなことないさ。私は強い」
「初めてだな。アンタが自分を過信すんの」
「事実さ」
「ならなんで俺に待機を言い渡す」
「サソリを守ってやるほどの余裕がない。大切な人が死ぬのは懲り懲りなんだ」
そう言いながら笑う姿に偽りはなかった。
俺もふっと笑う。いつぶりだろうか。笑ったのなんて。
名前の衿を掴んで引き寄せる。触れるだけの軽い口づけをする。一瞬の出来事。
「どうせ、待機は上司であるアンタからの絶対命令なんだろ」
「よく分かってるじゃないか」
「伊達にアンタの部下やってねぇよ」
ふっと笑って名前はさすがだねとだけ言うと一瞬で目の前から消えた。
多分名前は帰らない。
だが名前は帰ると言っていた。ならば信じてみようじゃねぇか。
信じる必要なんて、微塵もないけど信じてやるよなんて、ただの強がりで
本当は怖いだけなんだ
また独りになっちまうのが
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