ブログ | ナノ

「なんで、お前なんだよ」
「…」
「なんで、なんでよりによって」
「…」
「ふざけんなよ。この俺をいいように操る術が気にくわねぇ」
「…」
「なぁ、なんか言ってみろよ」
「…」
「嘘だって言えよ」
「…」
「俺が、お前を、殺しただなんて、」

嘘だって、言ってくれよ。
そう言って前みたいに笑ってくれよ。

気付いたら目の前に屍となって倒れていた女。俺が最初で最後に愛した女だ。屍というただの物体と化してしまった彼女を抱きしめた。きつく抱いたその体は妙に冷たく、俺を芯から冷やしていく。

「なんで、よりによって俺がお前を…」

生身となって転生した俺はいつぶりかも分からない涙って言うやつを滑らせた。
転生し、いいように使われ、初めて殺めたのが愛する女。

もはや何の感情も残らない。いや、感情など元から持ち合わせてはいないのだ。意思も関係なしに滑り落ちる水分は彼女を濡らし、地面に落ちる。そうしてできた小さなシミから現れた棺。それを合図に俺は体の自由を奪われる。離したくないのに体はそれを受け入れてはくれず、彼女の亡骸は地面に横たわった。

足は自然と棺へ向かう。
俺は再び暗闇の世界へ戻るのか。
そう思いながら俺は蓋が閉まるのを棺の内部から見つめた。
最後に見えたのは愛しいアイツの亡骸が俺と同じように棺に収まる光景だった。



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -