「冬の必需品?」

部活終了後、柳が持ってきた話題に全員が首を傾げた。

「いきなりどうしたのさ」
「いや、クラスの新聞部に出来るだけ多くの奴から聞きたいと頼まれてな」
「なるほど。冬の必需品のう……」

各々ユニフォームから制服に着替えながら、鍵当番の真田は部誌を書きながら来たる冬について考える。
まず声をあげたのは赤也だった。

「手袋ッスね!だっていつも持ってないと雪が降ったとき遊べないじゃないスか!」
「なるほど赤也らしいな」
「俺はホッカイロがないと生きていけんのう……」

子供は風の子なんとやらを体現する赤也の答えと反対に、寒さが苦手な仁王は身体を震わせて主張する。柳生がそれに賛同した。

「私もマフラーですかね」
「俺は鍋だな!」
「だろうよ」

案の定すぎるブン太の答えにジャッカルが半笑いで頷く。

「お前から食い物とったら何も残らねえしな」
「そういうお前はどうなんだよ!」
「あー……帽子か?」

吹き出す音がそこかしこで聞こえた。

「ハゲの宿命じゃな」
「ハゲ言うな!」
「ぶあっはっはっはっは!!」

仁王の一言に噛み付いた姿にさらにツボを刺激されたのかブン太と赤也が腹を抱えて笑い転げる。
その隣で真田と柳は暢気に会話していた。

「蓮二は何と答えるつもりだ?」
「俺か?そうだな……こたつ、とでも答えておくか」
「こたつか。良いな、あれは冬の風物詩だ」
「弦一郎はどうだ?」
「俺は……そうだな、湯たんぽがあると非常に嬉しい」
「確かにあれは良いな」

何じゃこの穏やか空間、と仁王が呟く。
ひとしきり笑って満足したらしいブン太が最後に幸村に水を向けた。

「幸村くんは?」
「俺かい?うーん…」

きっちりネクタイを締め、幸村は笑った。

「内緒だよ」
「えー!」
「部長ずるいッスよ!」

途端に囂々と非難の声が上がるが幸村はものともしない。ロッカーを閉めて「ほら、早く出ないと下校時間に引っ掛かっちゃうよ」と部員を追い払う。言われた部員たちは、渋々ながらもそれに従って部室から出ていく。
慌てて部誌を書き出した真田とそれを眺める幸村を残し、柳も何やら意味深な笑みを浮かべて出ていった。

「何か見透かされてるよなあ……」
「何をだ?」

苦虫を噛み潰したような表情をして呟く幸村を真田が不思議そうに見上げる。

「何でもないよ。それより真田、部誌書き終わったの?」
「ああ、すまないな。今終わったところだ」

さすがというか、話に交ざりながらも手は動かしていたらしい。いつも通りきっちり書き上げたそれを閉じて、真田は着替えるためにロッカーに手をかけた。

「幸村、部誌は俺が出しておくからお前はもう帰っても良いぞ」
「ん?ああ、ここまできたら待つよ。気にしないで良いから」
「そうか。なら急ぐからあと少しだけ待っていてくれ」

そう言って普段より慌ただしく着替え始めた真田の背に近寄り、ぎゅうと抱きしめる。

「幸村?」

着替えられないぞと顔をしかめる真田をガン無視して口を開く。

「俺の冬の必需品教えてあげようか?」
「……?」
「こたつとみかん」
「何だ、普通ではないか」

内緒などというから何かえぐいことでも言い出すのかと思いきや、至って普通の回答だった。拍子抜けしたように息をつく真田を抱きしめる力を強めて幸村が続ける。

「あとお前かな」

間。

「………………は?」
「だから、こたつとみかんとお前。お前と一緒にこたつに入ってごろごろしながらみかん食べるの。最高だと思わない?」

わざと耳元でそう囁いてやれば、真田の顔は面白いほど赤く染まっていった。






季節感は旅に出ました


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