百物語 | ナノ


▼ 2.目玉〈日向〉

2.目玉〈日向〉

次は俺の番か。じゃ、初めて真太郎に会った時の話でもするかな。
おお、そうだな、高尾。真太郎が邪魔しないように抑えておいてくれ。


真太郎と初めて会ったのは俺が小2、真太郎が小学校に入学したばっかの頃だった。そう、SG組のメンツの中で一番付き合いが長いんだ。真太郎の親父さんが俺の親父に会いに来てな。二人が話してる間俺が真太郎の面倒を見ることになった。
正直その時の俺は真太郎に対してあんまり良い感情を持っていなかった。簡単に言えば嫉妬だ。うちの親父から真太郎がいかに強い霊感を持っていて、神様に守護されているかを耳にタコができるくらい聞かされてたからな。薄ぼんやりと霊の姿を見ることしか出来なかった当時の俺にとって、真太郎は羨ましくも妬ましい存在だった。
だから、ちょっとした嫌がらせのつもりだったんだ。

うちの寺には開かずの小部屋みたいなのがあってな。親父もあんまり入りたがらない、俺でもやけに嫌な感じのする4畳くらいの部屋なんだが、そこに真太郎を閉じ込めたんだ。は?鍵しめたのか?そこまで鬼畜じゃねえよダアホ。ただ外側から扉を押さえてただけだ。
真太郎も最初はただ「開けてよー」なんて内側から扉を叩くくらいだったんだがな。いきなり

「やだあああああ!来ないでえええええ!!!」

って絶叫したんだよ。それこそ断末魔の悲鳴って感じの声に所詮いきがってただけのガキだった俺はビビッて扉から手を離した。真太郎はすごい勢いで飛び出してきてそのまま泣き喚きながら境内の親父たちのほうに走って行ってな。俺も慌てて後を追おうとして、何となく―――本当に何となく、扉の中を振り返って見ちまったんだ。

したら、目玉と目が合った。

…マジで目玉。目玉オンリー。あの瞬間のことは今でも覚えてる。やけにぎょろりとしたその目玉から視線を逸らすことができなくて固まってたら、鬼の形相の親父が来て頭にどでかい拳骨をくらって我に返った。
その後はお察しの通りだ。そんないたずらをして真太郎を泣かせた俺は親父にこっぴどく説教をされ、ついでに真太郎の守護神たちの不興も買ったらしくしばらくえらい不運続きでな。結局真太郎に謝りに行って…そこでとどめをくらったわけだ。


『何言ってるのだよ、お兄ちゃん』
『―――あの目玉は、ずっとずーっと、お兄ちゃんを見てたのだよ』

それを聞いた親父はすぐにその部屋を取り壊した。結局その目玉が何だったかはわからずじまいだが…特に知りたくもねえし、良いやってことにしてる。
これが俺と真太郎の出会いだな。冷静になって振り返ると最悪だな俺…なんだ高尾。小さい頃の真ちゃんマジ天使hspr?泣き顔写真ください?

…時々俺はお前の存在がホラーに見えてくるわ…







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