短編 | ナノ

 ↑おまけ


「『光と影』?」

試合終了後、火神と黒子に聞いた話を真ちゃんにしたら露骨に嫌そうな顔をされた。ちょっ、地味に傷付くんですけど。

「お前が影などという殊勝なものであるわけがないのだよ」
「えー、せっかく二人が認めてくれたのにさー」

うちのエース様は相変わらず偏屈だ。
俺がぶーぶー文句を言っていると、真ちゃんは心底不思議そうな顔でこっちを見てきた。

「高尾、お前は俺の影になりたいのか?」
「んー?いやまあ正確にはそうじゃないんだけど……ニュアンス的にはそうっつーか……」

この鈍感にはこんなこと言ったって通じないんだろーなー、なんて思いながら足元の小石を蹴る。その軌跡に気をとられ、危うく次の言葉を聞き逃すところだった。


「影は後ろにできるもの。お前は俺の隣にいるのだから、影になれるはずがないだろう」


………え。

「………真ちゃん今何て言った?」
「は?だから俺の隣にいるお前が俺の影になれるはずがないと……」
「ごめんもう良い分かった分かったから勘弁して俺死んじゃう」
「はあ?」

こいつ何言ってんだみたいな目で見られてるけど俺からしたら真ちゃんの方がよっぽどこいつ何言ってんだ、だ。
最上級のデレ、しかも無意識。絶対本人は普遍の真理言ったつもりであって、デレたとか微塵も思っちゃいない。
つまり、
俺が真ちゃんの、緑間の隣にいることは奴にとって言うまでもないくらい当然のことで、

「高尾!?お前いきなりどうしたのだよ!?」

今度こそ緩んだ涙腺を隠すことが出来なかった。ぼとぼととみっともなく涙が道路に落ちていく。あ、鼻水も落ちたよきったねーな。
汚いのに。
真ちゃんは自分のジャージの裾で俺の顔を拭ってくれた(かなり乱暴にだったけど)

「お前に泣かれると調子が狂うのだよ」
「誰のせいだと思ってんだよ」
「黒子と火神」

何でそっちにかっ飛んだ。
やべー、やっぱ真ちゃん面白すぎる。泣いてるヒマなんかありゃしない。

「真ちゃんっ」
「何だ」
「行こっ!」

右手を差し出す。口調は軽いけど内心結構ばっくばくだからね俺。
何とも言えない顔をしていた真ちゃんの手がふわりと上がる。







預けられた左手は、細くて、綺麗で、とても温かかった。






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