短編 | ナノ

 ↑の赤司視点


追加点を決めた時、洛山の勝利は決まったと感じた。
緑間は技術こそ天才の青峰や模倣能力を持つ黄瀬に僅かに劣るが、帝光中で副主将を務めていただけあってメンタルの強さには目を見張るものがある。だがその反面、一度弱いところを突き崩されると脆く崩れる一面も持っている。今の状況がまさにそれだ。上辺は取り繕えても、しばらくは赤司に食いついてこれるようなプレイはできないだろう。

まだ諦めを捨て切れない秀徳の三年が何やら緑間に声を掛けているが、何故それが無駄な行為だと分からないのだろうか。
精神論など所詮は弱い連中の自己満足。神は決して平等ではなく、歴然とした実力差は何に依っても覆すことなどできはしない。

つまり最初から緑間が赤司に勝つことなど不可能だったのだ。

これが青峰や黄瀬相手だったら言葉で追い打ちをかけてやるところだが、赤司は緑間に向けられる敵意がそう嫌いではない。最初から諦めているような連中と違う、真っ直ぐ自分を睨みつけてくるその視線は心地好くもあった。それが向けられなくなるのは少し面白くないから、黙っておくことにする。事実上勝敗は決したとは言え、まだ試合は続くのだ。

緑間に背を向けたまま実渕たち三将に次の指示を出そうとした赤司だったが、次の瞬間背筋を走った悪寒に思わず振り返った。

―――緑間の纏う気配がまるで違う。

本気を出した時の青峰のような、野生の本能に訴えかける獰猛なオーラ。立ちはだかるもの何もかも食い殺さんばかりの爆発的な闘志は、青峰と十分並び得るものであり、その根本で青峰を上回っていた。
青峰の根本にあるのは野生の本能だ。バスケに対する熱情だ。だが緑間のそれは違う。
奴のオーラの根本にあるのは、秀徳の勝利に対する執念だ。
青峰の闘志は基本的に自分一人のものであり、青峰自身にしか影響をもたらさない。むしろ、チームメイトはそれに圧されて自分のプレイを見失いかねないという危険を孕んでいる。
それに対して今の緑間の闘志は、秀徳のチームメイト全員の思いを詰め込んだかのように密度の高い、僅かにでもつつけば再び爆発し、仲間の士気を大きく煽るような洛山にとって危険極まりないなものだ。現に今まで見たことのない闘志剥き出しのエースの姿に秀徳の応援団は沸き返り、コートに出ている4人も顔付きが変わってきている。

柄にもなく赤司の思考に焦燥が走った。
緑間が、あの負けず嫌いだがクールで、人の見ている前ではそんなことおくびにも出さないような奴が、一体何がきっかけでここまで化けた。
滑らすようにして緑間の視線の先を追う。
緑間が睨みつけているのは赤司の背中だ。
だが赤司を越えて、狂おしく見つめるのは秀徳の三年レギュラーの背中。

バッシュの音を高く響かして立ち上がった緑間の視線が、今度は赤司を捉えた。
その濃緑の瞳に宿る剥き出しの敵意に、久しぶりにバスケをやる快感を思い出した。今度は悪寒とは違う感情が背筋を駆け抜ける。背中が震えた理由は、決して快感だけではない。
洛山のチームメイトも秀徳のバスケ部員も関係ない。緑間と睨み合い、赤司は唐突に気が付く。













もしも自分が負ける時がくるならば。
きっと自分は、緑間に負けたかったのだろうと。











正直赤司には黒子より緑間に負けて欲しいです。ずっと赤司に食らいついていた緑間に。






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