短編 | ナノ

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あれから一週間が経った。
『俺が傍にいて面倒見てやらねーと』いけない彼女と高尾とは、三日で破局したらしい。高尾の奴、お前とヨリを戻したがってるみたいだけど?とどこからか情報を嗅ぎ付けてやってきた赤司に緑間は笑って首を振った。

「そんな気はないのだよ。あいつは私の運命の相手ではないのだから」
「……え、もう運命の相手とやらを見つけたのかい」

眉を上げて聞いてくる赤司に緑間はああ、高尾の制裁は決まったなと内心元恋人に合掌する。気の毒に、だが彼が緑間の運命の相手でないことは紛れもない事実だ。
手慰みに弄んでいた角砂糖をコーヒーの中にぽちゃんと落とす。今日の蟹座は運勢一位、ラッキーアイテムのオレンジのシュシュもしっかり身につけている。こんな素晴らしい日は滅多にない。
あの赤司でさえ見とれるほど美しく唇を吊り上げて緑間は微笑んだ。

「今から会いに行くのだよ」







午後七時、夕食やら休息やらを求める人々でごった返すレトロな喫茶店。

「申し訳ありませんお客様、店内大変混み合っておりますので、相席をお願いしてもよろしいでしょうか」
「構いません」

いちごクリームのクレープを頬張っていた緑間は自分の荷物をどけ、店員の後ろを歩いてきた人物に向かって悠然と微笑みかけた。露骨に嫌そうな顔をしたその男は、それでも緑間の向かいに腰を下ろしてメニューも見ずにオーダーを伝える。

「オムライス一つ、グリンピース抜きで」

思わずふはっと笑い声を立てた緑間は、おいこら緑間轢くぞてめえという物騒な声をBGMにドキドキと胸を高鳴らせていた。
さあまずは、ずっと憧れていたハイヒールのパンプスを買いに行くところから始めようか。







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