別に女尊男卑ではないです

「やっほー少年」
「ちーっす」
「後ろの子達は友達?可愛いね」
「は?…あ」
「何、その反応。一緒に来たんじゃないの?」
「違う」

帽子の少年との約束を果たすべく駅前で彼を待っていた。少し遅れてきた少年の後ろで私達を見ている女の子がいたから聞いてみたら、後ろを振り返った少年の顔が歪んだ。二人の女の子を侍らせているのかと思ったが、どうやら違うらしい。てっきり一緒に来たのだとばかり。
少年は、本当に知らないとでも言うような表情で肩を竦めた。首を傾げて女の子達を見る少年と同じように彼女達を見ていれば、その内の一人が眉を吊り上げて歩み寄ってくる。もう一人が止めようとするのも何のその、大股で此方へ一直線だ。なんか怖いんだけど。でも二人とも可愛い。

「貴女、リョーマ様の何なのよ!」
「ちょ、ちょっと朋ちゃん…」
「桜乃は良いの!?何処の馬の骨とも知らない人にリョーマ様がとられても!!」
「それはその…嫌だけど、」

何か誤解されてる。とてつもなく誤解されてる。昨日の天使君のお母さんといい、そんなに誤解されやすいのだろうか。身長差がある為に見上げてくる女の子を見下ろしながら言葉を探すも、何を言っても無駄な気がして、半分諦めかけているのだが。負けるものか、と見詰めてくる女の子の瞳に炎が見えた。

どうしたものかと頬を掻く。活発そうな女の子が詰め寄ってくるのに仰け反りつつ帽子の少年に目を向ける。どうして我関せず状態なんでしょうかね意味が分からん。少年の知り合いだろうが、この子達は。内心でそう抗議して、少年の背中を軽く叩いたがスルーされてしまった。

「…はぁ」
「なんで溜め息なのさ。解せぬ」
「この人はただの友達。一応、先輩」
「一応は余計だろうが失礼な」
「……」
「こっち見んな可愛い」

大きな瞳で見上げてくる来られると許してしまいそうになる。危ない危ない。

「それじゃあ…」
「あー君たちが思ってるようなことは無いから」
「そうだったんですね。もっと早く言って下さいよ」
「言っても聞いてくれなさそうな雰囲気だったから、なんて言えない」
「言ってるけど」
「あの子達には聞こえてないからセーフ」

思っていたより話が通じたのは帽子の少年の口から言われた事だからだろう。私からだったらまだ険悪な雰囲気のままだっただろう。
恋する乙女は周りが見えなくなるもので、好きな人の行動に左右されやすい。必死になるのも分からなくはないが、切実に巻き込まれたくは無いと思った。乙女ゲームはあまりやらないので知識が乏しいが、前にやったゲームにこんな感じのシーンが有った気がする。私のお粗末な記憶力では断定出来ないのだが。

安心したのか、表情を和らげる女の子達とは反対に少年の表情は良ろしくない。何だか不機嫌そうな少年の頭に手を置いて顔を覗き込んだ。

「そろそろ行きますか、しょーねん」
「早く行くよ」
「んじゃ、私達はもう行くね。ショッピング楽しんできて。あ、オススメのお店教えたげる」

女の子には優しく、がモットーである。というのは今初めて言った。けど優しくするのは本当だ。最近の男は優しくないから駄目だよ。というか女の子の方が男前だから、男としても動きにくいんだろうか。いや、例えそうだとしても優しくすることは出来る。もっと女の子の事を見て上げるべきだと思う。そう、まるでキングのように。だからと言ってキングが沢山いても困るけど。絶対に五月蝿いし。
ポケットに突っ込んであったメモ用紙に、女の子から借りたペンで店までの道のりを書いて渡した。斎が見付けたお店なのでハズレでは無いはず。ハズレだったらごめん。

その場で女の子達と分かれて歩き出す。横を歩く少年が若干呆れ顔で見詰めてきた。

「あんたってさ、やっぱり変」
「解せぬ解せぬ」
「人とズレてる、って言われない?」
「少年は一言多いって言われない?」
「それはどうも」
「誉めてないし」

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