抹茶が一番好き
「そんなに驚くことかな?」
「皆にとってはそうなんじゃない?」
「そっか」
「うん、そう」
抹茶アイス美味しい。マスターも食べるかな、と思って見上げたら首を傾げながらも微笑んでくれた。美人なのが羨ましい。
「マスター食べる?」
「ああ、貰おう。抹茶は好きか?」
「一番好き」
「そうか」
スプーンを持っていない方の手で頭を撫でてくれるマスターに、パフェの容器を差し出した。お前らなあ、なんて呆れた声で私達を見るガムのお兄さんにへらりと笑う。
何も難しく考えることは無い。斎は素直だから、こっちも素直に受け止めれば良いんだよ。深い意味なんて無いから。素直に受け止めすぎると痛い目を見ることになる時もあるけど。その辺は自分で調節してくれ。慣れると付き合いやすくて、毎日が楽しくなる。とだけ言っておこう。私が上手くやっていっているのが良い証拠だ。
が、天使君に言わせると。
『類は友を呼ぶ。お前もどっこいどっこいだ』
だそうだけれど。解せぬ。
「神崎、悪いことは言わねえから副部長だけは止めといた方が良いぜ」
「ワカメ頭君よりマシだよ」
「てめえ…」
つん、とそっぽを向く斎に舌打ちをするワカメ頭君はそろそろ学習した方が良いと思う。真っ向勝負すぎるんだよ、君は。頭を使わなきゃ斎には勝てない。なんて言っても聞いてくれないだろうから教えてやんないよ。
二人を見ていた私の前に差し出された、アイスと生クリームの乗ったスプーンに瞬く。ゆら、と揺らされたそれに食い付いた。そのままスプーンを持つ手を辿れば、マスターが頬杖をつきながら小首を傾げている。美人は何もやっても絵になるし美人だ。
「そこ、いちゃつくんじゃなか」
「そういうつもりは無い。ただ、娘の世話をしているような…」
「娘wwww一つしか違わないのにwwww」
「じゃあ、俺はお姉ちゃんで良いよ」
「幸村君が姉とか嵌まり役すぎんだろぃ」
「あ、丸井は三男ね」
「俺は?」
「仁王は柳生と双子で次男かな」
なんかデジャヴュを感じる内容に斎と二人で顔を見合わせる。もしかしたら幸村様に心を読まれているのかな、なんて。そんなことは有り得ないけど。たぶん、思考の一部が似ているのだろう。パフェを食べさせてくれるマスターを目で追いながら、なんとなくそう思った。
「ジャッカルはおじいちゃんかな」
「おいおい…」
「真田はお父さんだね」
「では、俺が母か?」
「勿論。赤也は末っ子」
こうして、立海家族が出来ましたとさ。なんともまあ、賑やかな家族だこと。楽しそうだけどね。