どうしてこうなった

「あのさ」
「なに?」
「なんでこうなった?」
「私が聞きたいよ」

ノリと勢いで遊びに来たのがいけなかったんだろうか。見間違えるはずのない派手な髪色の人達を前方に捉えながら溜め息を無理矢理のみ込んだ。

バレたら終わりだと思え。向こうが私達を覚えているだろう、なんて自意識過剰かもしれないが、喰えない人物である銀髪のお兄さんがいるから一概に忘れているとは言えない。
音を立てずにこの場を後にする。私達の頭にはこれしかなかった。取り敢えず、後ろを向いてしまえば誰だかむこうも分かりはしないだろう、と身体の向きを変える。今更ここに来て帰るという選択肢は無く、彼等が去ってから行くことにしようと顔を見合わせて頷いた。もうひとつ理由が有って、帰るという選択肢が無かったりする。
そう、後ろを向いてしまえば良かったはずだ。が、しかし、すぐ後ろに気配を感じて思わず振り返ってしまった。それがいけなかったのだ。

「お前さんら、久しぶりじゃのぅ」
「…ひっ!」
「随分な反応じゃな。傷付くなり」

解せぬ。激しく解せぬ。
一体何なのだこの人は。全くもって意味が分からない。何でここにいるんだ。ついさっきまで向こうで談笑していたじゃないか。
したり顔で見下ろしてくるお兄さんに掴まれた右腕に、どうしても意識が行く。気にしないようにしたいのに出来ない。いつ、力が加えられるのかと冷々する。だから、いやだったんだ。後退る斎の手を掴んで引き留めた。一人だけ逃げるなんて許さないんだからね。

冷や汗が止まらない私達とは違って余裕綽々のその表情が気に食わなくて、眉間に皺を寄せたら腕を掴む手に力が入った。
バレてやがる。何て人だ。出来ることなら脱兎の如く逃げてしまいたい。じりじり、と後退する身体に反して、掴まったままの右腕はびくともしないのだから、少しは力を抜け、と内心で悪態を吐いた。
誰が、誰でも良いから気付いて助けて欲しいと切に思う。そして、この人をどうにかしてくれ、と。

「斎〜」
「うええ、無理だよーぅ」
「そこを何とか…」
「無理だってばー」

何度も首を横に振る斎は情けなく眉を下げながら、少しだけ慌てた様子で後退る。それを阻止しようと手を掴んでいたまま故に、引っ張られている体勢は、端から見たらまるで取り合いをされているようだ。なんと滑稽な姿だろうか。
こんなことなら天使君の言う通り、家で大人しくしていれば良かった。後から悔やむから後悔、か。誰が上手いこと言えと。

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