南の島での衝撃
リーゼントな中学生て新しいね。
初めて見たよ。
「縁、こっち」
「うわわわ」
眼鏡リーゼントに気をとられていたら、帽子のお兄さんに腕を取られて引き摺られるようにしてリーゼントのお兄さんの前に連れていかれてしまった。眼光の鋭さが可笑しい。これは中学生の目じゃないことは確かだ。
斎と目を合わせて首を傾げる。この人はきっと部長だろう、と。どこか確信めいたものを持ちながら、二人して頭を下げた。行儀よくしていれば何とかなるはず。それでも、視線を泳がす私達に綺麗なお兄さんが噴き出して笑った。
なんだよ、大人しい私達がそんなに面白可笑しいとでも言うのか。否定はしないぞ。だって、自覚はある。自分気持ち悪い。
「貴女方ですか。平古場君たちがお世話になったというのは」
「え、いや、どっちかって言うと逆…」
「うんうん」
「私は木手と言います」
「あ、藍沢です」
「神崎、です」
「藍沢君、神崎君、今日も迷惑を掛けるかと思いますが、お願いしますね」
そう言って、リーゼントのお兄さんは目で一礼して、ほんの少しだけ口角を上げる。なんという営業用だと、眉を寄せつつも、独特なイントネーションで紡がれた言葉に頷けば、お兄さんは満足気な顔で眼鏡の弦を押し上げた。
そこまで苦手ではないが、あまり好きになれそうにない人だと思う。取っ付きにくい人を好ましく思わないのは誰だってそうだろう。私達だって同じ。まだ会ったばかりだからこう言う態度なのかもしれないが、それを差し引いても苦手なのに変わりはなかった。
隣にいる無表情で背の高い人の方がよっぽど良い。
「ちゃーした?難しい顔して」
「あーいや、苦手だなぁって思って、」
「あ、」
「うわ、しまった!言っちゃった…」
「この、おバカさんが」
口に手を当てようが、言ってしまってはもう遅い。しまった、と顔に書いている斎が伺う様にリーゼントのお兄さんを見上げたら、いっそ清々しい程の笑顔みを貼り付けたお兄さんが、腕を組んだまま口を開いた。
「素直な方は好きですよ」
「うええええごめんなさああい」
きらってする眼鏡初めて見た…。