ツッコミ入れたら負け

昨日の疲れもあってか、ぐっすりと眠っていたらしく起きたら昼過ぎだった。一体どれだけ寝ていたのやら、斎の兄さんは既に仕事に行ってしまっている。
もそとそとベッドから這い出て、光る携帯に手を伸ばす。メールが2件。光と帽子のお兄さんからだった。光からのはお土産の催促メールで、何で沖縄に来ているのを知っているんだろうと思ったが、どうせ母さんが教えたんだ。 適当に返信しておいても問題は無い。だって光だから。

もう一通のメールを開いて目を通す。14時過ぎてからなら遊べる、という内容の帽子のお兄さんのメールには"是非"と打ち、数個のエクスクラメーションマークを付けて返信しておいた。ケータイを放り投げて洗面所に引っ込む。顔を洗ってさっぱりしないと、いつまで経っても目が覚めない。

未だ布団の中で惰眠を貪る斎を蹴り飛ばしながら歯ブラシを噛んだ。この歯みがき粉は好みじゃないけど、まあ、仕方ない。
床の上で悶える斎が布団の中から顔を出して恨めしげに見上げてくるが、そんなの知ったこっちゃない。まだ半分ほど寝ぼけているみたいだったが、そろそろ起きてもらいたいのだよ。

「なにー縁。まだ眠いよぅ」
「14時からお兄さん達が遊んでくれるってさー」
「まじでか。起きる」
「おう、起きろ」

お兄さん達のことを言っただけで飛び起きた彼女は、彼等に遊んでもらうことが気に入ったらしい。それは私もだけどね。たまに何言ってるのか分からない時があるけども。
着信を知らせる携帯の通話ボタンを押す。後ろが騒がしいから、部活の休憩時間にでも掛けてきたのだろう。が、何故に波の音がするんだ。

「もしもーし」
『よお。迎えに行ってやるから、昨日の駅に来いよー』
「あいあいさー。今、部活中なんです?」
『そうだけど、ちゃーした?』
「あー、何で波の音がしてるのかなぁって」
『ああ、今日の練習は素潜りなんばぁよ』
「へぇー」
『じゃあ、後でなー』

切られた携帯を握りしめて瞬く。何でテニス部なのに素潜りなのかはこの際ツッコミは入れない。入れるだけ無駄なのだ。と言うか、テニス部に常識は通用しない気がする。キングしかり、美人なお兄さんしかり。不思議がいっぱいすぎる。けれど、次にどんな人が来ようとも、動じない自信が付いてきた。嬉しくないけど。もう何でもこいよ。受け流してやるから。

「縁、いたい」
「あ、ごめん」

勢いよく振り向いたのは良いけれど、後ろにいた斎に気が付かなくて殴ってしまった。ごめん、ごめん。悪気は無いんだよ許して。



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