美人さんみっけ
「お、ゆーじろー」
「凜?何ばしとー」
「わんの台詞やさぁ」
お店の中には綺麗な金髪のお兄さんがいました。帽子のお兄さんの知り合いのようで、見たところ親しい間柄のようだ。動くたびに揺れる金髪は、きっときちんと手入れされているに違いない。
綺麗なお兄さんの前に座る帽子のお兄さんを横目見て、どうしようかと斎と顔を見合わせた。すれば、ここに座れ、とでも言うようにお兄さん二人して自分の隣を叩くではないか。何故に隣に座らなければならないのだろう。
「隣のテーブルに座りますから」
「良いから座りよー」
「……はーい」
綺麗なお兄さんに凄まれると怖い。見掛けによらず、というわけでもないけど強引と云うかなんと云うか。どこと無く物真似のお兄さんに似ていなくもない。
言葉に従い席について店内を見回す。暖かい雰囲気のお店は、地元の人でないと分からないような店構えをしている。なんか安心する気がした。
通い慣れているらしい帽子のお兄さんが何か頼んでいるのをチラ見してから斎と額をくっつける。何食べようか、といったところだ。
「縁ー」
「なにー」
「お腹減ったねー」
「そだねー。食べてないもんね」
「ミミガーとか試したい」
「ああーらふてぃとか?」
テーブルに突っ伏しながら私を見上げる斎の額を突っついて呟く。それに反応した綺麗なお兄さんが、きょとりと瞬いた。
「食べたこと無いの?」
「無いでーす。あ、標準語でありがとうございます」
標準語で話してくれるらしい綺麗なお兄さんに頷けば、表情がちょっと呆れたものに変わる。仕方ないじゃないか。初めてだもの。知らないことだらけでもだもだしていたら帽子のお兄さんに拾われたのだ、と綺麗なお兄さんに言えば、呆れた様子で溜め息を吐かれた。
その姿も絵になる綺麗なお兄さんは呆れ顔のままテーブルに頬杖をついて、もう片方の手で私の頬を突いてくる。されるがままに黙っている私の目の前で、帽子のお兄さんとじゃれて遊んでいた斎が店の人を呼んだ。
適当に注文したらしい料理は、確実に女子二人の食べる量ではない。その証拠にお兄さん達があんぐりとしている。私達を他の普通の女子と一緒にしてはいけないと云うことなのだよ。要するに規格外ね。
テーブルにへばり付いた斎の頭を小突きながら、私の頬っぺたを狙う綺麗なお兄さんの指を躱した。同じことを2度も喰らってたまるか。