早起きが嫌い
光のお父さんの作るお好み焼きはやっぱり美味しかったです、まる。
ふわ、と大きな欠伸を一つして起き上がる。宛がわれた部屋を出て2階へ上がり、遠慮なんてへったくれも無く光の部屋に入る。甘えた声で擦り寄ってくるリリを抱き上げて、未だ眠る光の肩を揺すった。がしかし、奴は身じろぐだけで起きる気配を見せない。仕方がない、と布団を剥いで、丸くなった背中に膝蹴りを一つ。いつもはこんなに寝汚い奴じゃ無いらしいんだけど。いい加減、起きろよ。
「ひーちゃん起きろー部活はー?」
「…んぅ」
「起きてーご飯だよー…ちっ。起きろっつってんだろ」
「…縁?」
「うん、私。リリもいるよ」
「おきる」
「おう、起きろ」
のそり、と起き上がる光に苦笑してカーテンを開ける。うわ、眩しい。
耳元で呼んでも起きなかったらリリに引っ掻いてもらおうと思ってたんだけど、残念だな。
目を擦りながら何処を見ているのやら。何も無い所をぼんやり見詰める光は少しばかり阿呆面だ。笑いを堪えながら制服を放り投げてやってから部屋を出る。
此処にいる間は光の目覚まし係なのだ。面倒臭くて仕方ないんだけどね。叔母さんからのお願いだからちゃんとやるよ。
「縁ちゃん、リリちゃんおはよう」
「おはようございますー」
「にゃう」
「リリちゃん朝から可愛い!」
「そう云うお義姉さんは朝から美人ですねー」
「もう、おだてても何も出ないわよ」
それは残念。口には出さずに肩だけ竦めて席につく。膝の上で丸くなるリリはまだ少し眠たそうだ。テーブルに頬杖をついてリリの背を撫でる。
夏休みなのに早起きしてるなんて、ちょっと良いことしてる気分。そう思いながら笑っていれば、準備万端な光が隣に座った。座る場所は決まってないけれど、何故か光は決まって私の隣に座る。
「はよ」
「おはー」
「眠い」
「今日は早く寝たら?」
「……」
「返事しろよww」
「いやや」
「駄々っ子ww」
「やって、縁が起こしに来るやん。寝坊の心配せぇへんでええし」
「目覚まし扱いww間違ってないけど」
「時計や、時計。似たようなもんやろ」
「私人間!」
「…うるさ」
おい、耳を塞いでんなよ。人の話を聞きなさい。時間無い、とか白々しいっての。だったら早くご飯食べて部活に行ってしまえ。
隣でトーストを頬張る光に肩を落としたら、慰めるかのようにリリがお腹に擦り寄ってきた。有り難う、その優しさが嬉しいよ。
光が凄く羨ましそうに見てきたから、リリを持ち上げて頬っぺたに猫パンチしたら額叩かれた。
「いってらっしゃーい」
「ん、行ってきます」
光がちゃんと挨拶するとか違和感有りまくりでキモい。どうした、何が有った。たぶん、きっとリリの癒し効果で機嫌が良いんだよね。今朝も時間ギリギリまでもふってたし。猫のお腹に顔を埋めてるイケメン御馳走様でした。
そんなリリは甥っ子君が苦手なのか、彼が起きる前に光の部屋に避難したらしい。
さて、私は部屋の掃除でもしてあげようかな。リリの毛でベッドが悲惨な事になってそうだし。
「うあー今日も暑いなー」