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一頻り甘えて満足したらしく、顔を上げた彼に拗ねた様子は見当たらない。
「朝、お前の飯食いたい」
「ええよ。何、食べたい?」
真剣な顔で何を言うかと思えば可愛いらしいおねだりである。
未だ貼り付いたままの背を撫で、それから前髪を掻き上げて露わにした額にキスを落とす。
あれやこれやと、到底朝食には似つかわしくないものを言い出すのを、黙って聞きながら頷き返した。これらが作れなかったらもう一日泊まっていくのだろうか。
そのようなことを考えてしまうあたり、自分も相当寂しいらしい。