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そういえば日本から貰ったという入浴剤をまだ試していなかった。可愛らしい桃色の花弁を模したそれを手に取れば、気付いた彼が寄ってくる。ボトルに顔を寄せるので蓋を開けてやった。



「ええ匂い……俺も入る」

「さっき済ませたやん」

「シャワーだけやし」

「まあ、ええけど」



さっそく湯を溜めに行った背を見送り、仕方なくシャワー室で身体を流していたらいつの間にか後ろにいた彼が何故かにこにこしていた。何、と目で訴えたが気付くはずも無く、ただ首を傾げられてしまう。時間をかけていられず、手早く終わらせタオルを巻いた。途端、残念そうな顔を隠しもしないので額を指で弾いておいた。



「えっち」

「堪忍したって」

「はよ入らな冷めてまうし、今日の所は勘弁しといたる」

「ほな抱っこしたるさかいはよ行こ〜」



有無を言わさず抱えられて、もう好きにしてくれと首に手を回した。






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「見えない臓器の名前は」
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