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作り置きと出先で買ったものとを並べてワインを開ける。中途半端に寝た所為か頭の回っていないらしい彼を浴室に放り込んでから少ししているので、そろそろ出てくる頃だろう。アヒージョを火から上げたところですっきりした顔の彼が、未だ水の滴る髪を引っ提げて戻ってきた。おざなりに拭いただけの手に握られているのはタオルとドライヤーだ。何を求めているかなど直ぐに察した。



「さっくりでええよ!」

「そんなら自分でやったらええやん」

「それはいやや」



ふくれっ面で唇を尖らせるので盛大に溜め息を吐いた。けれど気にした様子もない彼は笑顔でドライヤーを手渡してくる。食事が覚めたら温め直させてやる、とその頬を突いてからコンセントを刺した。





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BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
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