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無言で見詰めてくる彼に首を傾げても、恨めしそうな顔をされるだけだった。言いたくないのならば仕方がない、とアクセルを踏む。久しぶりに引っ張り出してきた愛車は、それでも文句のひとつも言わずに走り続けた。海を見に行こう。言い出した彼はどこ海に何で行くかまでは考えていなかったらしい。取り敢えず定番の場所に来め、埃を被った鍵を取り出したわけだ。下手したら年代物に近い車は予想よりもしっかりと動いてくれたので日頃のメンテナンスが功を奏した。

免許を忘れたと、あっけらかんと言った彼に呆れたのは言うまでも無く、かといって自分も嫌とは言えず今に至る。助手席で悠々と景色を楽しむ横顔に溜め息を吐いた。



「チュロス食うか?」

「食べる」

「あーんしたって」



言われるがまま開けた口に入れられたのは冷えた何かで驚いたが、正体はソフトクリームを纏ったチュロスだった。途中の店に寄りたいと言ったのはこの為だったらしい。何を買ったのかなど逐一確認しないので気付かなかった。チョコラータは好まないので非常にありがたい。甲斐甲斐しく世話を焼かれるのであれば、運転もそんなに悪くないなんて思うくらいには単純なのかもしれない。




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