12
西日が辺りを朱に染める頃、ようやく満足したらしい彼の小さな腹の虫に促され帰路に着く。暖かな陽が心地好いらしくゆったりと目を細めていた。瞬く度に煌めきが零れ落ちる緑の瞳に柔らかい朱を灯し、豊かな睫毛の奥で仄かに輝く様はとても美しい。かつて、彼の私室で無造作に積まれていた箱の中の煌めく塊たちを思い出させる。
「お前の目、めっちゃきらきらやん!」
「え?」
「綺麗やなぁ」
うっとりと言うから、面食らって瞬いてしまった。それはこちらの台詞だとか、いきなり何をだとか色々言いたいことはあったものの、同じ瞬間に同じことを考えていたのを気恥ずかしくも嬉しくいと思ってしまい、二の句が継げぬどころか直視することも出来ない。夕日が辺りを照らしていて助かった。そうでなければ赤くなった顔に気付かれていただろう。
「あんたもきらきらしとるよ」
「ほんま?お揃いやん!」
そう言って笑う彼はまるで太陽で、何よりも眩しく輝いていた。