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「祖国様やん!今日はどうしたん?」
「祖国、お花似合うなぁ」
「なんや今日は飲まんのか?」
等々。足を止めることが両手では足りなくなった頃、ようやく自分のモテ期に気付いたのか驚いた顔を向けるのでひとつ頷いて肩を竦めた。自宅周辺ではこんなことはない、と興奮気味の彼に、それもそうだろうと思う。彼がここへ来ることは珍しく、見かけることなど年に一度もない時も普通だった。そんな人を見たら声をかけたくもなるのではないだろうか。自分に至っては当たり前すぎて誰も触れてこない。流石に挨拶はくれるが、それだけだ。けれどわざわざ言うのも意地が悪いので、好かれていると肯定しておいた。ふうん、と何か考えながら呟いて、結局何も言わず耳元に飾られた花をつつく。嬉しくも恥ずかしいといったところか、可愛い反応をするものだと小さく笑った。
「お前は…?好き?」
「どーでしょーねー」
「あ!今のノルウェーっぽいで!」
「好きやよ」
彼が綺麗に膝から崩れ落ちた。