初めましてを交わし、愛しさに胸を震わせ満ち足りた一瞬に身を委ねる。約束を紡ぎ、さようならとまたねを重ね、束の間の微睡みにも似た感覚を手離しがたく思いながら、傍らの空白に寂しさを抱く。
また、と言葉を交わしたとて、温もりの数だけ約束で絡めとったとして、その存在が新たに生まれいずる確証が無い中でそれでも、名を呼ぶ甘やかな声を待つ。
淡く色付いた世界の中で彼女だけが苛烈なほど鮮やかで眩しい。いつ何時も、心を捕らえて離そうとはしなかった。瞬きひとつで過行く日々も、彼女とであれば、ただ通り過ぎるだけではない特別なものへと変わった。
色褪せ、擦り切れ、いつの日か形を失ってしまうのだろうと思われた感情は今も心の内側に留まり続けている。それどころか大きく強固なものへと成長し、恋焦がれ渇望するような、それでいて暖かで優しく分け与えたいと願うような、複雑で難解な存在として自身の一角に居座っていた。
これが知りたかったこと、得たかったものだと、気付き始めている。
彼女という存在が消えない。始まりのあいつが蒔いた種が芽吹き、大樹が大地に深く根付くように育っていく。
樹を彩る花は再会の数、約束の証。自己がなくなるまで増え、咲き続けるのだろう。
などと称した反面、その裏側は甘く柔らかで清廉なものなど一切孕んでいないのだと思う。言い換えればそれは彼女という存在への執着だった。心の内に遺るあいつへ、一重ずつ鎖を掛けては自分へと縛り付けている。そうしてまでも失いたくない。
ひとり遺しはしないと向けられた微笑みも、会いに来ると囁いた声も、永遠に愛すと誓ったぬくもりも全て、他の何もかも自分だけのものである。
それは、これから先もずっと変わらない唯一のこと。
これが愛だというのならば、それはなんて……