「瑠璃、私は自殺します!」

「うん話に脈絡ないよね、どうしたのさくたん」

「こんな人生では幸せになれません!生まれ変わります!」


いきなりこんな出だしでごめんなさい。

池袋朔、高校生です。
こんな名字だけど、生まれも育ちもド田舎。

そして、目の前にいるのは搭城瑠璃だよ!
搭か城かはっきりしてほしい名字だよね。

こんな名前だけど、瑠璃は男の子。
私の幼なじみというやつなのです。


「やめとけってー自殺は苦しいぞぉ」

苺みるくをズズズと飲みながら、受け流すように瑠璃は言う。

絶対信じてない顔だ。
このままでは、「この苺みるくうまいなー」とか言い出して話をスルーされてしまう!


「首吊りに苦痛なし説、知ってます?」

「首吊りって窒息死じゃないの?」

やっぱり知らなかったんだ瑠璃!
ばーかばーか!

心で無駄に瑠璃を貶しながら、私は「ちっちっちっ」と言って人差し指を左右に動かす。

「首吊りは頚動脈洞を圧迫するの。頸動脈洞反射っていうのが起こって、数秒で意識を失っちゃうんだって!十数分もしたらさようなら」


情報化社会ってほんと偉大。

こんな情報もタダで手に入っちゃうんだから!


「やめてよ、本当に朔が死んじゃうみたいじゃんか」

「だから死ぬんだって」

「なんで?人生の何が不満なのさ」

「ぜーんぶよ!こんなスタバもないクソ田舎に生まれて、無駄に厳しくてつまんない学校、自由なんてどこにもないです!」

私がそう言うと、瑠璃はうーんとひとしきり考える仕草をして、こう言った。


「じゃあ、俺も不満?」

「……わかんない」

「なにそれ」

「だってぇ…」


私は瑠璃の制服の裾をぎゅっと掴む。

それが合図だったかのように、瑠璃は私の頭をぽんぽんと撫でる。


「言っちゃいな。ぜんぶ、吐き出しちゃいな」


瑠璃のやさしい声がお腹の底にそっと落ちていって、やさしさがぱあっと広がってく。(ような感覚に陥る)

それがぐるぐると巡り巡って涙腺にたどり着き、私の涙腺を叩いて刺激した。


夕日に照らされて真っ赤になった私の頬に、一筋の涙が伝った。



「だってねぇ…私だってねぇ…都会のじぇーけーやりたかったもん…」

「うんうん」

「可愛い制服着て、皆と馬鹿みたいにはしゃいで、青春の思い出みたいなの作りたかったもぉん……」

「うんうん」

「学校やだなって言ってもみんな、三年間だけって言う…私は、朔は…そんなの嫌だよ……でもやっぱりみんな、わがままって言う…」

「うんうん」

「なら新しい世界でやり直したい…」


我ながら、しょうもない、ただの思春期の戯れ言だと思う。

でも私は絶対的な「なにか」が欲しくて。

だけどそれを掴むには、遠くにいかなきゃいけないような気がして。


「…じゃあ俺も」

不意に瑠璃が口を開いた。

「…なにが?思春期戯れ言大会したい?」

「俺も、死ぬよ」

「はっ?」


死ぬって?瑠璃が?

そう言って笑い飛ばそうかと思ったけど、瑠璃の目は真剣そのものだった。


「朔いないと俺もつまんないしね、愛の心中でもする?」

「なんか、大正っぽい」

私は笑う。

死ぬって話をしていて笑うなんてなかなかシュールかなとは思うけど、瑠璃が一緒なら死ぬのも怖くないかなぁって。


私は瑠璃のおでこに、自分のおでこをこつんと当てた。


「…うん。じゃ、死の」

「ん」


瑠璃も一緒に来てくれるならさ、来世っていう奴は絶対に楽しいよね!














一週間後


『ーー県で高校生二人が自殺を図ったという事件がーーー』

『ー二人は幼なじみで同じ高校にーー』

『動機は不明ーー見つかった遺書のようなものには一言だけーーーー』

『「来世は東京」とーー』



ブツン


誰かがテレビを、消した。





エンドロールに泣いたりしない

あなたたちには不幸に見えても、私たちは幸せなのです。









意味わからんですね!
しかしこういう意味わからん文は書いててとても楽しいものがあります。

自殺=バッドエンドという考えが広がっているのは、何でなんでしょうね。


タイトルは夜風にまたがるニルバーナ様よりお借りしました。この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。



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