※本編より少し前の話













二月十四日。

まぁバレンタインデーである。

と言っても寂しいことに勇者にはそういう相手はおらず、今日という日もいつものように終わる筈だった。


現在勇者一行はとある街の宿屋に宿泊しており、武器の手入れをしたり、僧侶と魔法使いはガールズトークとやらに華を咲かせていた。



コンコン

勇者たちが集まっていた一室に、軽快なノックの音が響く。


「どうぞー」

入室を許可すると、そこには従業員の女性が立っていた。

「勇者様宛に、小包が届いております」

「え、俺に?」

早急に勇者は矛盾点に気がついた。

勇者たちは色々な地を転々と移動しているのだから、大抵の知り合いは勇者たちの現在地など特定出来ない筈だ。
ましてや、宿泊している宿屋など。


「間違いじゃないですか?」

「いえ、確かに勇者様宛で御座いまして…」


女性の手から小包を受けとると、そこには確かに勇者の名前が書いてある。

とりあえず受けとる事にし、女性は一礼して戻っていった。


(誰だ…?)



疑問に思いながら、勇者は茶色い包みの端を破る。

中身はピンク色の箱で、真っ赤なリボンが付いていると言うなんとも可愛らしいものだった。


「わっ、勇者、チョコじゃないのそれ?村の誰かから?」

魔法使いが目を輝かせながら話しかけてくる。

「いや…誰かに現在地を教えた覚えはないんだけどね」

「中身を開けてみたら?名前書いてあるんじゃない?」


そうだね、と魔法使いの提案に乗ることにし、丁寧にリボンをほどき、包装紙を切り取って箱をあけてみる。


中には一枚の紙と、色々な形のチョコレートが幾つか入っていた。

「わぁ勇者!やっぱチョコじゃん!手紙読んでよ!」


はやくはやくと背中を叩きながら急かしてくる魔法使い。
隣にいる僧侶も気になるらしく、チョコレートを凝視している。



「分かったよ、読むから」


そっと手紙を取り出し、四つ折りを開く。

勇者の目に入ってきたものは、想像の斜め上あたりのものだった。






【はいけい ゆうしゃさま

ばれんたいんおめでとうございます

どうぞたべてください

あとまおうじょうにさっさときてください


魔王】








「………」

なんだか、どう反応したらいいものか。
魔王から?え?チョコ?






「なぁんだ、イタズラ?」

「…あ、そっか」


悪戯。

きっと、そうだろう。

ちょっとだけ戸惑った自分が馬鹿みたいだ。



「魔王チョコとかおもしろー!最近はそんなのも売ってるんだー」

「なんだか、平仮名で可愛らしいですね」

「まぁ、チョコは有難く頂くかなぁ」


苦笑いをしながら、勇者は星形のチョコをひとつ摘み、頬張る。


(普通に美味しい)



「あー、まえは戦士にやってたなー」

「戦士さんと仲良しですものね」

「ち、違うよ!?あいつがあまりにモテないからしょうがなく……」



魔法使いたちは再びガールズトークに華を咲かせ始めた。



…もぐもぐ

(………あれ、これよくみたら)


手書きな、ような…?








魔王城まであと、ちょっと。





それは微熱によく似ていた

(へったな字。)











今更すぎるバレンタインデー。

もちろん魔王が作りました(爆)

手紙が平仮名で古文書とか見ながら書いてる魔王が可愛いです。
魔王だけ漢字なのは、練習してたとかで(笑)

戦士は修行中です。外で








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