あれなもの置き場 | ナノ





マンションの窓(倉南/死)

※とあるコピペのパロな倉南です




恋をした。

毎晩部活で疲れて歩く帰り道。その中にマンションがあった。

確かとっても星が綺麗に見える日があって、そういうのに疎い俺でも「すげぇなー」と思って夜空を見上げてた。


ん?
いつものマンションの窓際に小さな陰が見えた。

(あぁ、星が綺麗だから)

窓から眺めている人がいてもおかしくないな、と思いつつ、窓を凝視してみる。

部屋に灯りをつけていないのは星を見易くするためなのか、とか考えていたら、一瞬通ったトラックのライトが、その部屋の窓を照らした。

ほんの一瞬だったし、横顔しか見えなかったけど。

綺麗な人だった、と、おもった。


それから毎日彼女は(彼かも知れないけど)空を眺めている。
きっと俺が気が付かなかっただけで毎晩眺めていたのかも知れない。

性別も名前も知らない「その人」に、俺は確かに惹かれていたのだ。



「き、緊張するな…」

そして今日、俺は決意した。
あの人に、会いに行こうと。

きっと驚かれるだろう。
もしかしたら、気味悪がられて、門前払いかも知れない。もうあの綺麗な横顔を眺めることも出来なくなるのかも知れない。

だけどもうこのまま見てるだけなのは、それ以上に耐え難いことだった。

申し訳程度の菓子折りを持ち、初めて入ったマンションの階段を一歩ずつ上がっていく。
段差を上がる一段一段がとても重く感じた。まるで「行くな」と警告でもしているかのように。

あの窓は、確か三階の右側の部屋。
たどり着いたドアの扉の横には「南沢」と書かれた表札が確かにあった。

南沢。みなみさわ。みなみさわさん。

初めて知る些細な情報になんだか胸がくすぐったくなるが、心臓の高鳴りにすぐかき消された。

緊張で震える指。
インターホンのボタンに触れているだけでも心臓が破裂しそうだった。

ボタンに触れていない方の拳をぎゅっと握り締めて、ゆっくりと力を入れた。

ピンポン、とよくある呼び出し音がその部屋に響いた。聞きなれた音なのに、それは俺の心拍数をずっと早めてしまう。



しかし、いくら待てども南沢さんは出てこなかった。


どうしてだろう?
確かに今日来るときも、窓から彼女の姿が見えた。

…昼なのに?


なんだか変な、嫌な感じの予感がした。ボタンを再度鳴らしてみる。だれも出ない。
少し考えて、俺は遠慮がちにドアノブを回してみた。ドアが持ち上がるような感覚。この部屋には鍵が掛かっていなかった。


「す、すみませーん…」

返事はない。

「南沢さん、いらっしゃい、ますか…?」

怖いほどに静かな部屋には、近所の公園からの子供らの声以外、何も響かない。

そしてしばらくして気付いた、鼻孔への違和感。
嗅いだことがないような悪臭がする。
それはこの部屋の奥から漏れているのか。

本能が警告している。
何を警告しているのかはわからない。だけどそれに従った方が絶対にいいのだろう。

でもー…。





「ーっ、失礼します!!」

靴を脱ぎ捨て、遂に部屋に入ってしまった。
なんてこと無い普通の、少しシンプルなマンションの一室。
しかしそれも奥から漂う異臭を引き立てる要素にしかならなかった。


三センチほど開いたドアが、リビングのすぐそこにあった。
直感というのだろうか。俺はわかった。ーここに、何かがある。

ここまで来たらもう躊躇することはない。できるわけがない。
相変わらず震えている掌でドアノブをしっかりと掴む。もう数センチ開いてしまっているから、力を入れる必要はない。

ギィィ

小さく扉がきしんだ。その音と同時に異臭ー悪臭は何倍も強くなっていく。
そして俺は「ひっ…」と小さな声を漏らしていた。


窓際に寄り掛るひと。
ひと、だったもの。

「それ」の周りには、散乱した…と、蹴り飛ばされたような椅子があった。
首には太いロープが巻ついて、どす黒い何かがこびり付いているのか、滲みてしまっているのか。

それは、死体だった。


「あぁ…ぁぁあぁ…」

彼は空を見てたんじゃない。

ただ、虚ろな眼で、…



全てを理解した俺は、散らかったロープの切れ端を拾い上げた。




End


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なんかもうイロモノ置き場とはいえすみませんすみません…。
これはとあるコピペのパロディーです。元ネタ知りたい方はご連絡頂ければお教えします!