小説 | ナノ

私は雷蔵が好き。気付いたのはずうっと昔。雷蔵を好きでない自分のことはよく思い出せない。雷蔵の肌は何時も透明な潤みがあって美しかったし睫毛のきめやかさもやわらかい綿のような髪の毛も雷蔵を形成するものは全て正しい物だと思えた。だから、私は偽物でもよいから雷蔵の真似事をしたかった。雷蔵と一つになる代わりに私は雷蔵になることを決めたのだ。だけど、私のあらゆる力を振り絞っても、雷蔵の瞳の強さだけは私にはまったく備わらなかった。雷蔵は顔立ちも体つきも儚いのに、瞳だけはとんでもなく強かったのだ。ぎらぎらとかがやくアルミホイルのような、そうだ、青い魚の下品なほどにきらびやかな鱗にもよく似ていた。何故出来ないのか、私はずうっと答えを出そうとしていた。やはり私はどうしても雷蔵と一つになりたかったのだ。
だから、ある日、つい口からこぼれた。
「雷蔵は何かに怯えているの。」
その瞬間だった。私の言葉を理解した雷蔵の瞳の銀鱗はぼろぼろと剥がれて、剥がれて、剥がれて、雷蔵の瞼の奥には夜の海のように荒々しい黒い眼が息もせず潜んでいた。ああ、ただの丸じゃあないか。雷蔵と一つになれた瞬間、私は雷蔵を失ってしまった。
「よくもまあ今まで」
雷蔵は苦虫を潰して食ったような笑みを浮かべた。余りにしたたかにだった。




1201??
ストーリー?
ありません勢いです(笑)



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -