入学式の時間よりも幾分早めに着いたせいか、クラスが発表されている掲示板の前にはそれほど人はいなかった。なのに偶然にも、名前と宍戸の前には彼等のもう二人の幼なじみの姿。あ、と揃ってしまった二人の声が届いたらしく、そのうちの一人も二人に気付いて大きく手を振った。
「よう、亮に名前!」
「がっくんにジロちゃんだー、おはよう」
「つうか何でジローがこんな時間にいるんだ?…っつっても寝てるみてーだけど」
「ジローは俺が引っ張って来たんだよ!名前こそ珍しく早えじゃん」
 宍戸と全く同じ事を言った向日に名前は気分を悪くすることも無く、むしろ誇らしげにちょっと張り切ってみたんだ、と笑った。
 向日と芥川は互いの家こそ少し離れているものの、名前や宍戸にとって大事な幼なじみであることは変わらない。幼稚舎では大体一緒にいたよなあと名前が思い返していると、芥川が不機嫌そうに目を擦りながらゆるゆると瞼を持ち上げた。
「ん〜、うるさい…」
「あ、ジロちゃん起きた?おはよ」
「あれ〜?名前と宍戸がいる…おはよう…」
「おいジロー、クラス見てきたら俺とお前一緒だったぜ!で、名前と亮が一緒」
「えっ、ほんと?」
 向日の言葉に驚いた名前がクラス表に目を移す。何枚あるか分からないそれをA組から順番に見ていくと、確かにC組のところに自分と宍戸の名前があった。芥川と向日は隣のD組に名前がある。
 これなら体育とか一緒かなぁ、と呟いた声にだろうな、と返事をしたのは、いつの間にかすぐ隣に来ていた宍戸だった。
「亮ちゃん、一緒のクラスだよ」
「分かってる。よろしくな、名前」
「…うん!」
「…あんまり迷惑かけんなよ、頼むから」
 もうすっかりくせになっているのか、ぽんぽんと名前の頭を撫でる宍戸が若干うんざりした顔になっているのを見て向日は盛大に吹き出した。この二人の幼稚舎時代が鮮明に焼き付いているからだ。
 横目で睨んでくる宍戸にごめんって!と向日が軽く謝ると、宍戸は諦めたように軽い溜息をついた。
「落ち込むなよ亮!」
「うん、俺も同感〜」
「…ジロちゃんにだけは言われたくないよ」
 どこか生温かく笑う向日と芥川に、お前らうるせえと眉を寄せる宍戸。そんな三人を見ながら、やっぱり同じ中学にしたのは正確だった、と名前はへらりと笑う。
 騒がしい日の始まりは、もうすぐそこまで迫っていた。


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