手を繋いで、とん、とん、二人で階段を上ってゆく。それなりに息は上がっていたけれど、澄んだ空気を吸い込むたび、胸がすうっと冷える感覚は気持ちがいい。
「大丈夫か?」
「うん、平気」
 繋いだ手にぎゅっと力をこめて、一つ、また一つと階段を上る。それを何度も繰り返してやっと着いたのは、何も無い、ただ広いだけの丘。空を仰ぎ、それだけで嬉しさに疲れを忘れながら、その丘のちょうど真ん中で腰を下ろした。
「すごーい…綺麗…」
「ああ、来た甲斐があっただろう?」
「うん!」
 都会でも少し足を伸ばせば星が見えるところがある、なんて、いくら蓮二の言ったことでもちょっとだけ信じられなかったけれど、やっぱり嘘じゃなかったんだ。
 空にまで届きそうなほど弾む気持ちで芝の上に寝っ転がると、蓮二が小さく溜息を吐いた。
「…汚れるぞ」
「汚れは洗ったら落ちるからいいの。ね、蓮二もやろうよ」
「…そうだな」
 ふ、と淡く笑って、意外にあっさりと蓮二も横になった。もしかして私がこうすることを予測してたのかもしれない、と頭の片隅で思ったけれど、そんなことはどうでもいいか、とまた空を見上げる。 星座とか、神話とかは知らない。私が知らない分、きっと蓮二がよく知っているから、あまり知りたいとも思わない。
 そして、そういう知識が無くても、こうやって横になって星空を見ていると、まるで自分が空の一部になったみたいで――酷く、落ち着かなくなることを知っている。
 その時、ふと繋いだままの手に軽く力が籠められた。
「…どうかしたのか?」
「ううん、…何も」
「そうか」
「そうだよ」
 握った手に力を入れて、小さく笑う。そうすれば蓮二も笑ってくれるから、一人ぼっちのときみたいな落ち着かなさなんて感じない。
 連れて来てくれてありがとう、そんな言葉に籠めたきらきら光る想いが蓮二に届くことを星に祈りながら、時間も忘れて二人、漂うように空を眺めていた。


 


慈雨様に提出)


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