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“もうひとりのボク…”

声が聞こえる。

“信じてるよ”

とん、と背中を押された。
振り返ると、笑っている、相棒の姿。

“それから、ごめんね。気がついてあげられなくて”

消えていく相棒の姿。
なん、で、なんで…

「相棒ーッ!!」


*****


(…これでよかったのか…いや、これでよかったんだ)

倒れた遊戯からオレイカルコスの結界のカードを回収したラフェールは、少しばかりの後悔を抱いた。ラフェールには彼の姿が幼く見えていたのだ。そしてあんなに深い闇を抱え込んでいた、そんな彼を傷つけてしまったのかと……

「ゆ、遊戯さんッ!」
「遊戯から離れろ!!」

声のした方へ顔を向けるとラフェールたちのターゲットに上げられていた遊星と刹那がいた。デュエルに集中していた為、近くにいたことに気がつかないでいたのだ。

「不動遊星に刹那・F・セイエイか…こいつはお前たちに返す。だが忘れるな、お前たちもいずれ私たちが倒す…」

とりあえずの目的は果たしたと、ラフェールはそのまま姿を消した。残されたのは倒れた遊戯と遊星、刹那だけ。

「そうだ!しっかりしろ、遊戯!!」
「遊戯さん!」

ラフェールが姿を消した後、真っ先に駆け寄った刹那が地に伏したままの遊戯を抱き起こし、遊星は必死で呼び掛ける。
すると小さく呻き声を出し遊戯が目を覚ました。しばらくぼーっとしていたが急に何かを思い出し、動かなくなってしまった。

「遊戯…どうした?」
「遊戯さん、無事でよかった…」
「…ぃ」
「「??」」
「オレは、無事なんかじゃない……ッ!」

遊戯はそう言うと抱き起こすようにしていた刹那の腕を振り払い、そのまま後退りしてしまう。

「オレのっ、オレの代わりに相棒がッ!」
「遊戯さん!?何言って…」
「オレがいるから、相棒が苦しんでしまう!オレがいるから……!」
「そんなこと…!」
「……そうだ、こうしたら相棒は帰ってくるかなぁ!?」
「!?やめろッ!」

首にかかった千年パズルを躊躇いもなく腕に振り下ろす遊戯。それを見た遊星と刹那は彼の精神状態が尋常ではないことに気がついた。また千年パズルを振り下ろそうとする彼をふたりは必死で押さえ付けた。

「嫌!離せ!!こうすれば相棒は帰ってくるんだ!」
「違う!そんなことしても帰ってはこない!ただ、遊戯が傷つくだけだ!!」
「嘘、嘘嘘嘘嘘嘘うそうそ!ちゃんと相棒は帰って…」

パァン!!

乾いた音が響いた。
遊星が遊戯に平手打ちしたのだ。
突然のことに遊戯も刹那も固まってしまう。

「そんなことして、遊戯さんが傷ついたらもうひとりの遊戯さんが悲しむ!何があったのか大体は想像がつきました。だけどそうやって逃げるのはダメだ!!逃げちゃいけないんだッ!」
「あ、あ…、あ、いぼ、相棒ーッ!うわあぁああァァァァッ!!」

遊戯の泣き叫ぶ声が辺りに虚しく響き渡り、遊星と刹那はそれを見ていることしか出来なかった。


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テーマ「人外ファンタジー」
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