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「う、ん………ここ、は…?」

オレイカルコスの結界が発動した際弾き飛ばされた遊戯が目を覚ますと、何処までも深い闇が広がる空間だった。

「……ッ、そうだ、もうひとりのボクは!?」

きょろきょろと周りを見渡すがやはり深い闇ばかり。これじゃわからない、と肩を落とした遊戯だったが、ふと彼の耳に泣いているような微かな声が届いた。

(誰か、いる?)

声の発生源を探す為に、微かな声を頼りに歩き出した。しばらく歩くと闇の中にぼんやりとエメラルドのような光が見えてきた。それは見覚えがあるもので、見つけた時には遊戯は走り出していた。

「誰、誰かいるの!?」
「…な…い…」

走って走り抜いた、その先にあったエメラルドの光の中にいたのは──闇遊戯だった。

「も、ひとりの…ボク?」
「ごめんなさいごめんなさい、でも負けたくない、負けたくないんだ……!負けたら、オレの存在する意味なんて…」

彼は何時もとは違う虚ろな目で言葉を紡いでいた。心の闇とも言える、そんな言葉を。

「そうだ…勝たなければ…オレの存在のためにも……負ければ、オレはイラナイ存在なんだ」
「ちがっ、違うよ!」
『そうだ、お前は負けたら捨てられる、存在の証が無くなる。嫌だろう?』

ふと遊戯でも闇遊戯でもない声が響いた。遊戯が声の方へ振り向くと、そこにいたのは全身に白い服を身に纏った“闇遊戯”だった。しかし白を身に纏った“闇遊戯”の目は翡翠のような眼で額にオレイカルコスの紋章が浮かび上がっていた。

『くすくす…なぁ、嫌だろう?でも大丈夫。オレが手助けしてあげる。さぁ…もっともっと強く願え。負けたくない勝ちたい、捨てられたくない、存在の証が欲しいと!!』
「……負けたくない負けたくない負けたくない負けたくない負けたくない!勝って、勝って、勝ち続けて!捨てられたくない!オレの、存在の証が欲しいッ!!」

“闇遊戯”に誘導されるように言葉を出す闇遊戯。その姿に徐々に変化が出始めた。額にはオレイカルコスの紋章が浮かび始め、眼は左側だけ翡翠色になりかけている。それを見ている“闇遊戯”はとても満足そうに笑っていた。ぞくりと背筋が凍りそうな冷たく歪んだ笑みを浮かべて。

(…もしかして、あいつがもうひとりのボクを刺激して…オレイカルコスの結界を使わせた?)

“刺激”、それは闇遊戯の不安を煽ったものではと遊戯は考えた。記憶がない、身体がない彼は心の底ではきっと強い不安を抱いていて、ずっとずっと深い闇を抱え込んでた。ドーマとの戦いが始まってからそれは決壊しやすくなってしまい、“刺激”によって決壊したのではと……

『そうだ、それでいい。これでみんなお前を認める。存在している証明が出来る』
「うあ、あ、あぁ…負け、たくない…勝ちたい、存在の証が…ほしい…」

(……ごめんね、ごめんね。気づいてあげられなくてごめんね…)

遊戯は何故か“闇遊戯”を止めることが出来ず、涙を流しながら負けたくない勝ちたい存在理由が欲しいと言う闇遊戯に、心の中で謝ることしか出来なかった…


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