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「だから、マスターたちを呼んだのです。デュエルモンスターズの世界には、ある言い伝えがあります」
──人間の住む世界と我らの世界。あしき闇の力によりて、暗雲立ち込める。
正しき闇の力持つ王、白龍を愛す者、黒龍と共にある者、彼方より現れ名も無き竜たちの傷を癒し、暗雲を祓うであろう。
「まさかとは思うんだけどさ、“正しき闇の力を持つ王”って、もうひとりのボク?」
「“白龍を愛す者”は、あのバカ社長だな…」
「“黒龍と共にある者”は城之内くん……?」
遊戯たちは言い伝えに出てくる者たちが、身近にいる仲間たちでは、と考えた。
だが1つ疑問が浮かび上がった。
「何故、オレはここに呼ばれた……」
「たしかに…言い伝えに読まれているのが、仮にオレと海馬と城之内くんだとする……しかし、刹那を連想する人物は読まれていない」
「そうだよね…言い伝えに刹那くんは読まれていなかった。なのになんで?」
遊戯の言うとおりだった。
刹那は言い伝えに読まれていない。言い方を変えるといる意味がないのだ。
「…言い伝えは、もうひとつあります」
──名も無き竜の傷を癒す者。その者を護る為、異界より使者が現れる。
精霊と共にある者、龍の力を持つ者、天使を操る者。
異界の使者、護る力を授からん。その力、かの者たちに癒し与え、あしき闇の力から我らを護る。
「“天使を操る者”ってオレたちか…?ガンダムを駆るオレたち…」
「“精霊と共にある者”、“龍の力を持つ者”は…」
「十代と遊星、だな」
すべてが繋がった。
刹那が呼ばれた理由も、あの言葉も……
「覇王の言葉の意味、やっとわかった……」
「そう、だな」
「マスター!名も無き竜の傷を癒し、世界を救ってください!」
すべて合点がいった彼らに逃げる理由はなかった。
ならば、することは1つ。
「もうひとりのボク!」
「わかってるさ、相棒!」
ふわりと飛び上がり、氷結した名も無き竜に刺さっている剣に手をかけた。
「う、うぅ…」
「ん…ぬ、抜けろよ…」
「「目覚めろよ、名も無き竜!!」」
遊戯と闇遊戯の言葉に反応するかのように、剣が抜けた。
抜けた部分から氷に亀裂が走り、砕け散った。
《グオォォォ!》
「名も無き竜よ、オレたちはお前の名を知っている!」
「そう、君の名は……」
頭に流れ込んできた名を、呼んだ。
「「ティマイオス!!」」
「……封印されし竜、ティマイオス」
「刹那さん、あなたに渡すものがあります。」
「オレに……?」
「これです」
ブラック・マジシャン・ガールの手に抱えられていたのは、1本の剣(つるぎ)。
どこか懐かしいもの、刹那はそう感じた。
「これは、私たちの仲間から託された物です。確か、“セブンス・ソード”と言っていました」
「セブンス・ソード……!?」
刹那が驚くのも無理はなかった。
彼が駆るガンダムエクシアの開発コードが“セブンス・ソード゙”だったのだから。
「これは、きっと刹那さんやマスターたちを護ってくれるはずです」
「……わかった。約束は必ず守る。あんたたちの世界とオレたちの世界そして遊戯たちは必ず守る」
「……ありがとう」
その言葉を聞いたとほぼ同時に、刹那の視界が真っ白になった。
「ん…」
次に目を覚ますとそこは、見慣れた天井だった。
「夢、だったのか……?」
ふと、刹那の手に何かが当たっているのを感じた。
「これは…セブンス・ソード…」
(夢じゃ、なかった)
夢ではないことに僅かな安心感を得たが、それでも不安の方がまだ強かった。
(でも、負けるわけにはいかない)
約束がある。
刹那は隣で眠る遊戯の手をそっと握り、再び眠りについた。
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