※初対面



「…おい、」


昼休み。腹ごしらえをして屋上庭園内にある人気のない指定席へ戻ると、あろうことかそこには見知らぬ先客が居た。デザートのフルーツ牛乳のパックを握りしめながら木々に囲まれた隠れ家的ベンチに近づく。そこに横たわるのは見覚えのない図体のでかい男。背格好からして3年か。3年生を二回やってるおれからすれば、もはやこの学園の生徒は全員後輩であるから遠慮する必要はない。ストローを噛みながらとりあえずベンチを下から蹴りあげる。ガツッという鈍い音と共に男がうっすらと目を開いた。


「…誰だ」

「そりゃこっちの台詞だっつの。邪魔だからどいてくんない」

「おれが先に座ったベンチだ」

「それより前からそこはおれの指定席なんだよ。わかったら退け、不良くん」

「意味がわからない」


真顔でこちらを見上げる不良くん。話の通じない奴だ。ガリッとストローが削れた。


「とりあえず邪魔だから退けっつってんだよ」

「断る。ベンチは公共物だ」

「………」


ぶちん。なにかが切れる音がした。
するりとストローが地面へと落下する。それが跳ね上がるより前におれは素早い右ストレートを不良くんに放っていた。


「―――ッ!」


ばちぃん、と皮膚と皮膚がぶつかる音が響く。
見れば不良くんがおれの拳を左手で受け止めていた。びりびりと振動が伝わる。


「…暴力は良くない」

「ならそこを退け。次は当てるぞ」

「……わかった」


渋々といった感じに彼がベンチから離れる。おれはストローを踏み潰してそこに座り込み、煙草を取り出す。


「おい、高校生が喫煙をするな」

「悪いけどおれ留年して20歳だから問題なし」

「…20歳?」

「佐保姫遥、20歳の星詠み科3年」

「……波戸根俊彦、17歳の神話科2年」

「はぁ?2年?3年かと思ってた」

「よく言われる」

「神話科2年ならおっちー知ってる?」

「……越智先生は担任だ」

「まじかよ。おっちーと仲良しなんだおれ」

「はあ」

「おっちーにこないだ貸した借り返せって言っといて」

「は…?」

「じゃ、おれはお昼寝するから。またな波戸根」

「………」



‐‐‐‐‐‐‐‐‐
はとねんとの出会いでした〜はとねんかっこいいよはとねん〜