「おーす、白銀ー」 「うげっ…」 昼休み。なにか面白いネタがないかとカメラ片手に校内をうろうろしていたら、いま一番会いたくない人物と遭遇してしまった。 「なんだその反応」 「い、いやぁ、お久しぶりですね〜佐保姫先輩」 「そうかー?まあ、ちょっと放浪してたしな」 「何処行ってたんですか?」 「ベネズエラ」 「………」 「それより100円くれよ」 「貸すんじゃなくてあげなくちゃいけないんですか」 「返せる保証はないしおれはいまルピーしか持ってないから」 「…はぁ。わかりましたよ。どうぞ」 「さんきゅー」 「…いい加減卒業してくださいよ」 「卒業させてくれない学校が悪い」 「授業出れば良いだけじゃ…」 「白銀ー、」 ガッ、と頭を掴まれて無理やり顔を突き合わせられ、低い声で告げられた。 「おれに指図はしてくれるなよ?」 「……ッ、!」 鋭く光る眼光。血に餓えた狼みたいな、痛々しいそれに悪寒が走る。むかしより荒れてないとはいえ、変わっていない。 「…く、ひひ……厭だなぁ、分かってますよ」 「そっか。なら良い」 ぱっと手を離された瞬間に慌てて間合いを取る。下手すると殴られかねない。 「んじゃ、おれは戻るわ。またなー白銀」 「さようなら〜」 そうして小さくなっていくカーディガン。ため息を吐きながら呟く。 「か弱い後輩からのカツアゲは反対、だなー」 でもあの人には逆らえない。現実は残酷だ。おさらばした100円の幸運を祈りながら、俺は踵を返した。 ‐‐‐‐‐‐‐‐ 佐保姫さんに一度ぼこぼこにされてるので桜士郎は逆らえないというお話。私得! |