※佐保姫さん1年、啓太くん2年



「おらおら、今日こそは観念しやがれ佐保姫!」


敵襲敵襲。寝起きの脳髄に直接響く怒声。よれよれの煙草を咥えながら特等席を立つ。


「…まーたあんたか」

「よお佐保姫、今日も調子づいてんなぁ」

「悪いけど朝は無理。おれ、低血圧だから」

「知るか。つか低血圧のくせに朝から煙草吸おうとしてんじゃねぇよこの不良」

「煙草は不良の代名詞だろー」


おれの前に立ちはだかるのは、生徒会副会長の中村啓太。毎日毎日授業をさぼるおれを連れ戻そうとやってくる煩い奴だ。つーかまだ一限目なのに来るの早くね?なんて呟きながら火を点けようとしたら素早く煙草を奪われた。あ、と間抜けな声が出る。


「未成年は喫煙すんな馬鹿」

「法律は破る為にあんだよ」

「言い訳は生徒会室で聞く。とにかく来い」

「誰が行くかよ」

「なら力付くだな」


そう言うと同時に中村は鮮やかな右ストレートをおれに向かって放つ。ライターをポケットにしまってからそれをかわし、懐に入りつつ胸部に肘うちを見舞う。そのまま腹部に拳を入れようとしたら、痛みに咳き込みながらも奴が空いた方の腕でおれの首を捉えやがった。


「っ離せ!」

「離せと言われて離す奴が居るかよ馬鹿」

「…っ、の…!」


後ろと前からがっちりホールドされて動きがとれない。唯一自由のきく脚を思い切り動かして中村の脛を蹴ってやる。短い悲鳴と共に拘束が緩む。隙をみてしゃがみこみ拘束から逃れると中村は顔を引きつらせながらこちらを睨んでいた。


「生徒会副会長様を蹴るとは良い度胸だなおい」

「んなもん関係ねーよ。次は顔殴るぞ」

「やれるもんならやってみろ」

「あぁやってやんよ。後で吠え面かくなよ」


それから小一時間殴り合いをして結局授業には出ない。それがおれと中村啓太との関係性だった。



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力尽きた…荒れてた頃の佐保姫さんは啓太くんにとてもお世話になってたと思います。