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鬼灯の冷徹・好きです



「みなさぁぁぁん!呑んでますかぁ?食べてますかぁ?!」


日向は陽気に声をあげて、一升瓶をふりあげた。


「日向様!!危ないです!」

「だ、だれか一升瓶取り上げてっ!」




「私は食べてまぁす!ごはんおかわり!!……うわっ」

振り上げた一升瓶を取り上げられ、日向は腕を引っ張られ腰を下ろした。


「ここに座りなさい、日向」

鬼灯だ。
有無を言わせぬ目線を酔いの回った日向にむけて、ぎゅーっと彼女の腕を握っていた。


「は、はい。鬼灯さま……
じゃあここで食べますね〜シーラカンス丼XLと味噌カツ定食!」


笑顔で店員を呼んだ彼女、今度は心配そうなお香が声をかけた。


「ちょ…そんなにたのんじゃだめでしょう?」


「あ、お香ちゃん……これくらい…むしろあと一品デザートを!」


「日向、ほどほどにしておかないと……私との子供、欲しくないですか?」

「へ!?!」

鬼灯の一言で、とんでもなく周りがざわつきはじめる。

「太り過ぎの出産は大変です。まぁ、日向はもう少し太った方がいいくらいですが」

そう言ってくいっと枡を傾けた彼。
日向は真っ赤な顔でそれを見つめていたが、酔っているのか照れているのかわからない。



「あ〜スッキリ!みんな盛り上がってる〜?」


そこへ空気を読んでか読まずか、トイレから帰ってきた閻魔大王が鬼灯と日向の前に腰を下ろした。


その瞬間、シーンと鬼たちも静かになったので、なになに?なにがあったの?と閻魔大王は興味津々、と言った様子で皆に視線を送っていた。



「……うっ」

ぱったん、と両手のひらで畳を叩いた日向はそのまま倒れるようにして寝転んだ。
いや、全身の力が抜けて崩れ落ちた、と言う方が正しいだろう。

「……おや、限界が来てしまったようですね」

鬼灯はそっと彼女の髪をかきわけ、ふっぷした顔色を確認した。


「すみませんが加減を知らない馬鹿が眠ってしまいましたので、今日の所は失礼しますよ。皆さんも、大王のお孫さん話が始まる前にそろそろ腰をあげてください」

彼がそう言うと、鬼たちは顔を見合わせ、ぞろぞろと立ち上がった。

「あれ?あれ?みんなもう帰っちゃうの?」

しゅんと寂しそうな大王はかわいそうだったが、鬼たちは便乗してそそくさと帰って行き、わずか数名を残しただけだった。

「よっこいせ……」

鬼灯は軽々と日向を「お姫様抱っこ」すると、大王に言った。

「それでは失礼します。お疲れ様でした」

「あ、うん……気をつけて帰ってね」

すこし拗ねた様子の大王に「かわいくないですよ」と一言残し、鬼灯は店を後にしたのだった。









「ほぉずきさまぁ……」

「なんですか」

「…………」

鬼灯は日向を自室に連れてくると、ベッドに寝かせた。
苦しいだろうと彼女の帯を緩めた所で、彼はある事に気が付いた。

スンスン。

くさい。
くさいのだ。

なんとも油臭い、居酒屋の臭いだ。

「………これは、困りましたね」

ふむ、と顎に手を添えた鬼灯だったが、いまからやる事はたった一つだ。
布団に臭いがついては困るのだから。


「日向、眠いのはわかりますが失礼しますよ」

そう言ってもう一度抱き上げると、部屋を出た。

角をひとつ曲がって奥へ入ると、そこは補佐官専用の風呂だ。
補佐官専用の、と言う事は、日向か鬼灯しか使えない。
正直滅多に使う事は無いが、いまから彼がやろうとしている事にはぴったりだ。

ガチャンと鍵をかけると、また日向をおろして脱衣所のソファーに座らせた。
10畳ほどあろうかという脱衣所は、2人だけのためには無駄以外の何物でもない。
そもそもここは、前任の補佐官が作ったものなのだ。
仕事の合間に入浴するために。



日向はたまにここでゆっくり湯に浸かっている様だったが、鬼灯はあまり使わない。
彼女に気を使っているわけではないが、なかなか足が向かないのだ。

彼はこれまた広い浴場の扉を開けた。
もわんと湯気が立ち昇り、湿気が一気に脱衣所へと逃げ込んだ。


「湯が張ってある……」


鬼灯はちらりとソファーに崩れている日向をみた。
どうやら彼女は、飲み会が終わってからここで湯に浸かるつもりだったらしい。


「まったく、どうすればあなたが飲み会終わりに眠ってしまわないのか教えてください」


1人冷静にため息をついた彼は、そっと彼女の頬を撫でた。







「あったかい……」

日向は身体がほかほかして、気持ちよく目を覚ました。
気がつけば鬼灯の部屋のベッドの上で、パタパタと部屋の主がうちわでこちらを扇いでいる。

「さっぱりしましたか?」

「……あ、はい…お風呂入った後みたいな…」

「当然です、入りましたから」

「あれ…酔っ払って気持ちよく眠っちゃった気がしてたんですが…」

「はい、私が風呂に入れました」

「は?」

「だから私が風呂にいれました」


「はぁぁぁぁあ!?」

日向はがばっと起き上がって声を張り上げた。
彼女はハッとして自分が着ているものを確認する。それは紛れもなく鬼灯の着物だった。

「み、みたんですか!!」

「………何をですか?」

ひょうひょうと鬼灯はそう言った。
間違いなく確信犯だ。

「いっいやっお嫁に行けない!!」

そう言って布団を被ると、勢いよく鬼灯に剥がされた。

「貰い手ならいるじゃないですか、ここに」

彼は日向を抱き寄せると、洗いたての髪を撫でた。

「……や、酔ってますか…?今日は鬼灯様変です…」

日向は近距離で見つめられて、思わず顔を逸らした。

「酔ってますよ、日向に」

「なっなっなんて大胆な事を!!!」

「好きです、日向」

「……そんなことベッドの上で言わないでください………」


戸惑う日向の頬に、鬼灯は優しくキスをした。
それによってさらに顔を赤らめる彼女だったが、もう逃げるそぶりは無かった。

鬼灯の唇が自分のものと重なると、目をとろんとさせながら鬼灯を見つめる。
それをよしとして彼もまたさらに口付けた。

「鬼灯さまぁ……大好きです……」









-あとがき-

ミサさまお待たせいたしました!
彼シャツ着物Verです!
ちょっと違いますが………

なんともまぁ数ヶ月もお持ちいただいてしまいました。
本当に申し訳ありません。
こんな管理人ですが、また遊びにいらしてくださると幸いです。


2014年5月27日ミサさまに捧ぐ


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